研究実績の概要 |
深部スロー地震発生域にかけては、高Vp/Vs比の領域が幅広く確認されていることから多量の水が存在することが示唆されている。本研究はプレート境界に存在すると考えられる物質の力学特性が温度圧力および間隙水の影響によってどのように変化するのか解明することを目的とした。そのために世界初となる間隙水圧を最大1GPaまで上昇させることのできる高温高圧変形試験機用の間隙水圧発生器を製作した。本研究課題の予算を用いて改良した試験機を用いて、試料中の水の量を変化させて高温高圧下において岩石を変形させた。実験データより岩石の強度に対する水の量(水/岩石比)と水の圧力(間隙水圧)の効果を独立で見極め、それぞれを定式化することに成功した。本研究により地下深部の岩石の粒間に存在する水の効果は大きく、体積分率で6%の水が存在するだけで、断層帯の強度をおよそ半分にすることがわかった。また、剪断変形に伴う結晶の伸びとそれに斜行するようにクラックが形成されるS-C'マイロナイト構造が剪断帯中に観察された。本研究からは沈み込み帯で通常考えられている間隙水圧の不均一性に加えて、水の量の不均一性の方が沈み込み帯におけるすべり挙動の多様性をもたらしている可能性が高いことを明らかにすることができた。本研究の一連の成果についてはすでに国際誌において報告済みである(Okazaki and Hirth, 2020; French, Okazaki and Hirth, 2019, Tectonophysics; Okazaki et al., 2021, JGR)。
|