研究領域 | 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 |
研究課題/領域番号 |
19H04637
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三浦 謙治 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00507949)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2020年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2019年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 植物におけるタンパク質大量発現システム / 植物ホルモン / ストリゴラクトン / ブラシノステロイド / つくばシステム / 壊疽抑制 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は植物における世界最強のタンパク質大量発現システム「つくばシステム」(4 mg/g植物体 のタンパク質発現量)の開発に成功している。そこで、本システムにより生合成酵素を大量発現させることで、植物ホルモンであるストリゴラクトンおよびブラシノステロイドを大量生産させることを目的とする。本方法により、植物二次代謝産物の生産が可能となれば、植物を活用した物質生産プラットフォームの確立につながる。
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研究実績の概要 |
本研究では稀少なものを大量に作ることを目的に、ストリゴラクトンおよびブラシノステロイドの大量蓄積を目標にしている。この際、生合成酵素を大量に植物にて一過的に発現させるため、「つくばシステム」を用いている。つくばシステムだけでなく、一般的に大量発現システムの問題点として、発現させるタンパク質によっては折りたたみが不十分であったりして、小胞体ストレスが原因と考えられる壊疽が引き起こされる。特に、大量にタンパク質を蓄積するつくばシステムでは、タンパク質の種類によっては壊疽が顕著に現れる。この壊疽(細胞死)が起きてしまうと、タンパク質が分解されるため、代謝産物も蓄積できないことにつながる。 本年度は、この壊疽を抑制する方法を見出すことを中心に研究を行った。方法としては、小胞体ストレスの緩和を目的とした小胞体ストレス阻害剤の投与、熱ストレスをかけてシャペロン生合成の促進、細胞死を誘導する際に放出される活性酸素の除去を目的とした抗酸化剤の投与である。 結果は、小胞体ストレス阻害剤および熱ストレスによるシャペロン生合成促進はほとんど効果が見られなかった。また、シャペロン(Jタンパク質)を過剰発現させた場合も、ほとんど効果が見られなかった。一方で、抗酸化剤としてアスコルビン酸を100mM以上という高濃度で噴霧した場合、壊疽が抑制された。しかも、タンパク質の発現量も大幅に改善された。アスコルビン酸を投与する先行研究はいくつかあるが、数mM程度であり、100mM以上の投与を行って、壊疽が改善された報告は皆無であった。この知見は、つくばシステムのみならず、ほかの一過的タンパク質発現システムにも適用されるかを、magnICONシステムにて行ったところ、同様に改善がみられたことから、高濃度アスコルビン酸投与が壊疽の抑制に多大なる効果を発揮することが分かった。本研究成果をもとに特許出願を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物におけるタンパク質一過的発現において、その収量低下をもたらす壊疽(細胞死)を抑制できる方法を発見できたことは、大きな成果である。この壊疽抑制により、代謝産物がどれぐらい蓄積するのかを次年度で明らかにしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要でも記載の通り、壊疽(細胞死)が高濃度のアスコルビン酸噴霧により抑制されることが明らかとなった。ただ、このアスコルビン酸濃度であるが、あまりにも高過ぎると浸透圧ストレスを与えてしまうことから、どの濃度が適切であるかを調べる必要がある。そこで、いくつかの濃度のアスコルビン酸を噴霧することで、至適アスコルビン酸濃度を検討する。また、壊疽がおきる原因と高濃度アスコルビン酸噴霧のよる抑制のメカニズムについても明らかにすることで、壊疽抑制の効果を確立させる。 次に、高濃度アスコルビン酸噴霧が生合成酵素発現にも効くのかを調べる。具体的には、ストリゴラクトンあるいはブラシノステロイド生合成酵素を発現させたベンサミアナタバコに高濃度アスコルビン酸を噴霧することで、目的の植物ホルモンの蓄積が増加するかを調べる。また、この際に、噴霧するアスコルビン酸の量を調節することで、至適アスコルビン酸濃度を明らかにすることを目標とする。 また、ストリゴラクトンの生産において、βカロテンを出発物質とすることで行っているが、メバロン酸生合成の律速酵素HMGRを高発現させること、およびゲラニルゲラニル二リン酸からリコピンまでの経路をゴールデンライスと同じような手法(バクテリア由来CRTIに葉緑体トランジットペプチドを融合した酵素を発現)で高発現させることで、βカロテンをさらに蓄積させて、ストリゴラクトンの高蓄積を目標とする。 ブラシノステロイド生合成については、これまで2つの酵素が未同定とされていたが、この反応は、ほかの酵素が補っている可能性が推測された。そこで、発現させる酵素を1つずつ抜いた場合に、どの中間体が蓄積するかを調べることで、ほかの酵素が生合成経路を補っているかどうかを明らかにする。
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