公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
複数のアニオンがカチオンに結合している複合アニオン化合物では、多くの場合カチオンの周りの環境が非対称になります。この結果、単アニオン化合物では実現できないような光に対する応答や磁性・伝導性が実現できる可能性があります。本研究では、ピラミッド型配位のような遷移金属サイトに反転対称性がない複合アニオン化合物を対象として、系統的な物質合成と光特性などの物性測定をおこない、新しい光機能を持った材料の実現を目指します。また、カチオンの軌道状態にも着目し、低次元磁性や異方的伝導、金属絶縁体転移などを開拓します。
複数の異なる種類の陰イオン(アニオン)を含む遷移金属化合物では、遷移金属に複数種のアニオンが結合することで、反転対称性の破れる可能性が高くなる。このため、多くの場合、反転対称性によって光吸収が禁止される従来の単アニオン化合物と比べて、複合アニオン化合物は光に対する応答が強いと考えられる。遷移金属に結合するアニオンを選択し、積極的に結合の仕方を制御することで、革新的な光機能の実現が期待できる。また、結合したアニオンによって作られる複合アニオンにユニークな電子の軌道状態を利用して、単アニオン化合物では実現できない磁性や伝導性が発現すると考えられる。本研究では、申請者らが発見した、偏光に応じて光の吸収波長が変化する複合アニオン化合物Ca3ReO5Cl2 をモデル物質として、化学修飾と物性測定を行うことで、物性発現の機構を解明し、結合の積極的な制御による光機能・電子物性の設計指針を確立することを目的としている。2019年度にCaサイトをBa、Sr、PbにClサイトをBrに化学置換した新規化合物の合成に成功した。また、これらの化合物に対する構造解析、光学測定、そして第一原理計算を行うことで、電子軌道状態の変化を明らかにした。2020および2021年度は、特に磁気的性質を集中的に検証した。合成した新物質もCa3ReO5Cl2 と同様に特定の電子軌道を電子が占有するため、磁気相互作用が軌道の形状に由来した強い異方性をもつことが明らかとなった。さらに磁性イオンが三角形状に配置することで磁気ゆらぎが増大し、スピン間には相互作用が働くにも関わらず磁気秩序が形成できないスピンの液体状態が実現することを明らかにした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件)
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 90 号: 3 ページ: 034710-034710
10.7566/jpsj.90.034710
210000158859
Industrial & Engineering Chemistry Research
巻: 60 号: 27 ページ: 9897-9905
10.1021/acs.iecr.1c01424
巻: 90 号: 9 ページ: 094708-094708
10.7566/jpsj.90.094708
210000159248
Inorganic Chemistry
巻: 59 号: 14 ページ: 10025-10033
10.1021/acs.inorgchem.0c01187
巻: 89 号: 11 ページ: 1147091-9
10.7566/jpsj.89.114709
Physical Review Research
巻: 2 号: 4 ページ: 043121-043121
10.1103/physrevresearch.2.043121