公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ヒドリドは、高エネルギーかつ高速導電が可能なアニオン種であり、将来的には革新的な化学変換デバイスにおける活用が期待される。その実現のためには、高速ヒドリド導電性を示す物質の開発が不可欠である。本研究では、層状ペロブスカイト型の酸水素化物におけるヒドリド導電パスの設計により、中温領域(200-500度)での高速ヒドリド導電を目指す。
負の水素イオンであるヒドリド(H-)は、プロトン(H+)での拡散が困難な中温領域(200-500 °C)における、高速イオン導電が期待される。水素社会への貢献や次世代エネルギーデバイスへの応用のためには、安定的に高速ヒドリド導電を示す材料が求められる。2020年度の実績を以下に記す。(1)昨年度に発見した層状ペロブスカイト型構造を持つ新規イットリウム系酸水素化物Ba2YHO3について、ヒドリドが岩塩層に秩序分布していることを、粉末中性子線解説を用いた精密構造解析によって明らかにした。電気化学インピーダンス法を用いたイオン導電率の評価によって、350°Cで0.1mS/cmに達するヒドリド導電度を確認した。本新学術領域内の共同研究者による第一原理計算により、ユニークなアニオン秩序とヒドリド拡散パスの知見を得た。これらの結果をまとめた論文は、Chem.Commun.誌に掲載された。(2)酸化物を「含まない」複合アニオン化合物をターゲットとしたヒドリド導電体開発を推進した。高圧合成によって得られた新規水素化硫化物では、400°Cで1mS/cmに達するヒドリド導電率を観測した。当物質は、驚くべきことに、大気中でも安定であることが明らかとなった。現在論文準備中である。また、領域内の共同研究で、水素化ハライド化合物の電気化学測定を実施し、中温領域で世界最高となるヒドリド導電特性を見出した。本成果はSci.Adv.誌に受理され、2021年中に出版される。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 産業財産権 (2件)
Chem. Commun.
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120006936380