公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
胸腺髄質上皮細胞は、自己免疫疾患の発症抑制に必要な抗原提示細胞である。核内因子Aireは髄質上皮細胞による自己抗原の発現を制御し、自己免疫寛容を誘導する。一方、我々は髄質上皮細胞の分化と機能の制御機構に関する研究の過程で、髄質上皮細胞において自己抗原の発現を制御し、免疫寛容を誘導する新たな転写因子を同定した(転写因子Xと略)。本研究は転写因子Xによる自己抗原の発現誘導機構を明らかにする。また転写因子Xの機能不全により生じるネオ・セルフの実態を遺伝子レベルとタンパク質レベルで検討し、疾患発症へのプロセスを明らかにする。Aireおよび転写因子Xによる胸腺におけるネオ・セルフ形成の全貌解明を目指す。
胸腺髄質に局在する上皮細胞(mTEC)は、自己免疫疾患の発症抑制に必要な抗原提示細胞である。核内因子AireはmTECによる自己抗原の発現を制御する。我々はmTECにおいて自己抗原の発現を誘導し、自己免疫を抑制する新たな転写因子Xを同定した。本研究課題は、転写因子Xによる自己抗原の発現誘導機構を明らかにすることを目的とする。我々は転写因子Xを胸腺上皮細胞(TEC)特異的に欠損したマウス(cKO)を自家作成した。さらにAireとXを両方欠損する二重欠損マウス(DKO)を作成し、解析を行った。その結果、Controlと比較してcKO、Aire欠損(AireKO)およびDKOマウスの胸腺細胞数に変化はないが、cKOではmTEC数が顕著に減少した。DKOにおいては、成熟マーカーCD80の発現が低い細胞群(mTEClo)が顕著に減少した。cKOにおいては、Annexin V+のmTECが有意に増加しており、成熟mTEC(mTEChi)の増殖マーカーKi67の発現が低下した。この結果は転写因子XがmTECの生存維持と増殖に寄与することを示している。一方、発現解析の結果から、cKOにおいてはAire 非依存的な自己抗原の発現が低下し、DKOにおいてはAire依存的・X依存的な自己抗原に加えて、それ以外の自己抗原についても発現が低下した。この結果はAireとXが相補的に働くことを示している。さらに、20週齢のDKOにおいては、ControlおよびAireKOと比較して末梢の活性化T細胞が有意に増加し、全身組織の炎症および自己抗体の産生が見られた。ATAC-seq解析の結果から、XはTECの組織特異的遺伝子の転写領域のアクセシビリティを上げることが示された。以上の結果から、転写因子XはAireと協調的にmTECにおける組織特異的自己抗原の発現制御し、免疫寛容を誘導することが明らかとなった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
The Journal of Immunology
巻: 15 号: 2 ページ: 303-320
10.4049/jimmunol.2100692
eLife
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Front Immunol
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10.1038/s41467-020-19975-4
https://www.riken.jp/press/2020/20200122_1/index.html
https://www.riken.jp/press/2020/20201202_3/index.html