公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
従来の植物・微生物相互作用研究の大部分は宿主:微生物=1:1というシンプルな実験系による。一方で、環境中における植物はウイルス・真菌・細菌を含む、多種類の病原・非病原微生物叢との相互作用によってその生育が規定される。本課題では、研究代表者のこれまでの研究から見えつつある「エコ・スフィアー」における植物ウイルスの生物間相互作用レギュレーターとしての役割の分子機序の解明ならびにその普遍性・特異性を明らかにすることを目指す。本課題を通じて植物/微生物生態系恒常性におけるウイルスの多様な役割を理解する。
環境中において植物は、ウイルス・真菌・細菌を含む、多種類の病原・非病原性微生物叢との相互作用によってその生理状態が規定される。本研究では、このような「エコスフィアー」における、植物ウイルスのレギュレーターとしての役割の解明を目的とする。これまでの研究から、red clover necrotic mosaic virus (以下、RCNMV) は、宿主足場タンパク質RACK1 (receptor for activated C kinase 1) 依存的に、糸状菌由来免疫エリシターであるキチン誘導性MAPK活性化を増強することが明らかとなった。RCNMVの複製酵素タンパク質p27はRACK1と相互作用し、RACK1とMAPキナーゼとの複合体形成を促進した。本現象の普遍性・特異性を明らかにするため、RCNMVと系統学的に近縁のトムブスウイルス科に属するウイルスの種々の複製酵素タンパク質がキチン誘導性MAPK活性化に及ぼす影響を解析した。その結果、興味深いことに、キチン誘導性MAPK活性化を促進するもの、抑制するもの、影響を与えないもの、の3パターンが見られた。また、キチン誘導性MAPK活性化を促進あるいは抑制するウイルスの複製酵素タンパク質はRACK1に結合する一方で、キチン誘導性MAPK活性化に影響しないウイルスの複製酵素タンパク質はRACK1に結合しなかった。さらに、種々のタンパク質間相互作用解析や感染実験などから、キチン誘導性MAPK活性化に影響を及ぼすウイルスは、複製酵素タンパク質を介してMAPK-RACK1複合体の形成に作用しMAPK活性化を正あるいは負に制御することで、糸状菌の二次感染に影響を及ぼすことが示唆された。以上の結果から、植物ウイルスが植物免疫に対して及ぼす影響の多様性とその分子メカニズムの一端が明らかとなった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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