公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
植物の生殖過程に関与する「鍵と鍵穴」の機能解明において,有機蛍光色素を用いた植物ライブイメージングは,多様な植物種を対象に「その場で,すぐに染色」できる強力な手法である。本研究では,耐光性近赤外蛍光色素と機能性ペプチドと組み合わせることで,花粉管動態のライブイメージングに資する独自性が高い分子ツールを創製し,有機合成化学的な側面から植物新種誕生の原理に迫る。またこれを用いて二光子蛍光顕微鏡による植物深部イメージング技術を確立する。
エチニル基を有するホスファローダミン色素と膜透過性ペプチドBP100を連結したNLPPを培養タバコ細胞BY-2に作用させたところ,核小体局在を示すことを見出した.NLPPで染色したBY-2細胞を10分間隔で撮影したところ,細胞分裂時における核小体の崩壊と,分裂後の再形成の様子を捉えることに成功した.次に,色素の細胞内への取り込み機構について検証した.1時間毎に撮像したところ,初期段階で核小体選択的な蛍光が検出されたが,時間の経過に伴い液胞が徐々に染色される様子が捉えられた.核小体と液胞の蛍光強度をそれぞれ時間に対してプロットすると,両者が異なる速度で増大していることがわかり,二種類のNLPP取り込み経路が存在することが示唆された.また,アジ化ナトリウムによるエンドサイトーシス阻害実験を行ったところ,核小体の蛍光強度は変化しなかったのに対し,液胞からのシグナルは大幅に減少した.以上の結果から,細胞膜を直接透過したNLPPは核小体へ移行するのに対し,液胞への取り込みはATP依存的なエンドサイトーシス経由であることが明らかとなった.これを踏まえ,BY2の細胞破砕液を用いた競合アッセイにより,膜透過後における核小体局在経路について検討した.その結果,細胞膜を透過したBP100ペプチドが核輸送タンパク質と結合していることが示唆され,膜透過性と核移行の両過程に寄与していることがわかった.NLPPは植物細胞の核小体ライブセルイメージングを可能にする初めてのプローブであり,核小体の形成機構やストレス応答など,新たな生命現象の解明に繋がるものである.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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