公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
認知・行動・性格など高次脳機能における「個性」は、個体毎の脳の活動の違いから生まれる。本研究の目的は、難治性てんかん患者を対象に、高次脳機能の臨床的特徴と脳の形態的・機能的変化を対応させることにより、各個人における個性とその神経基盤を明らかにすることである。その方法としては、詳細な神経心理学的検査、留置硬膜下電極を用いた皮質電気刺激による高次脳機能マッピング、選択的Wada Testによる高次脳機能に関連する皮質領域の同定、機能的MRI/脳磁図による言語優位半球の同定を行う。それらを統合・解析することにより、脳の変化がどのような機能の変化と対応して各個人の個性を形づくるかが明らかになる。
本研究では、言語や相貌認知などにおける個々人の個性の神経基盤を知るために、術前評価として行われる皮質電気刺激、皮質脳波、超選択的Wadaテストを用いて個人毎に機能野を同定し、術後の機能との対応を行ってきた。その結果、てんかんや脳腫瘍の患者においては、以下のことが明らかになった。まず、各個人における言語や顔認知に関わる部位は、一般的に言語野や顔認知領野と言われている領域のごく一部に限局しており、その部位を温存すると術後に永続的な障害は生じない。また、言語機能が左大脳に偏っていない例や、言語理解に通常言われている側頭葉ではなく前頭葉が主に関わっている例があり、言語の神経ネットワークに再編が起きていることが推測された。さらに、相貌認知については右側頭葉前部切除例だけでなく左側頭葉前部切除例でも低下が認められた。したがって、相貌認知は従来言われてきたほど右後頭側頭葉に偏在しているわけではなく、左後頭側頭葉も関与している場合が多いことが示唆された。個々の症例をみると、ほぼ同様な部位の切除にもかかわらず、相貌認知の障害には個体差があることが分かった。記憶に関しては、超選択的Wadaテストにより左海馬領域の機能を一過性に止めても言語記憶に明らかな低下が生じない例が複数認められ、記憶の側性化にもある程度幅があることが分かった。以上のように、言語、記憶、顔認知の神経ネットワークは、多くのヒトである程度共通する部分はあるものの、細かい部分では個人による違いがあり、通常とは異なるネットワークをもつ例もあることが推察された。このような認知機能の神経基盤における個体差が,認知的活動における「個性」につながる可能性がある。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件、 招待講演 6件) 図書 (1件)
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