公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
動物のナビゲーション行動は、外界の環境を感知し、必要な情報を取捨選択し、行動として出力するという入出力関係が明確であり、神経回路における情報処理のしくみを明らかにするうえで優れた系である。本研究では、代表者がこれまで開発してきた顕微鏡や画像解析・時系列解析の技術を活用し、線虫の全脳イメージングを通じて、実際の神経回路における情報処理の仕組みを明らかにすることを目指す。
本研究では、ナビゲーション行動中の線虫の全神経活動の観察に加えて、機械学習等による特徴抽出や時系列予測技術などを活用して、神経活動や行動を解釈する枠組みを構築することを目指す。2020年度は、ナビゲーション行動中の線虫の全神経活動の観察を実現するため、前年度に引き続き、スピニングディスク型共焦点顕微鏡に自動追尾ステージを組み合わせる方式について検討を進めた。撮影方法および光学系について改良を重ねた結果、行動中の線虫を自動的に追尾しながら、線虫頭部の全神経を立体動画として撮影することに成功した。しかし撮影した立体動画から神経活動を抽出するためには既存の画像処理パイプラインの改良が必要であることがわかった。また行動中の線虫に対して光遺伝学的に摂動を与えて神経機能を検証するため、顕微鏡の光学系の改良を進めた。また忌避刺激を感じる神経にチャネルロドプシンを発現させた線虫を用いて、光刺激を与えながら線虫の姿勢と行動を観察して定量化し、行動の数理モデル化を行った。MDN-RNNを用いた数理モデル化によって、線虫の前進と後退の切り替えなど、確率的な行動の変化が適切にモデリングできることがわかった。さらに強化学習の枠組みを利用して、光刺激のパターンを制御して、線虫を特定の場所へ誘導する方策を学習させた。強化学習によって得られた光刺激の方策は、塩走性行動におけるピルエット機構と同様の行動戦略を生じさせると考えられ、強化学習によって行動戦略を自動的に発見できる可能性が示唆された。本研究の成果は現在論文投稿中である(森ら)。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
BMC Biology
巻: 18 号: 1 ページ: 30-30
10.1186/s12915-020-0745-2
Proc Natl Acad Sci U S A .
巻: 116 号: 37 ページ: 18673-18683
10.1073/pnas.1821716116