公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
体全身に行き渡る血管は酸素・栄養分の運搬や選択的(薬物)透過性など高等動物の高次生命活動の根幹となるだけでなく、外的な環境変化やストレス刺激を受け取る最初の体内センサーである。しかし血管新生を伴う内皮 Ca-カルシニューリン-NFAT経路の分子解析は 、特に NF-kBとの協調的な転写シグナルについては殆ど解明されていない。本研究は血管炎症シグナル伝達の数理モデル構築と内皮細胞・疾患モデルマウス (個体レベル) での実証解析を基に、生体恒常性維持システムの統合的理解を推進し、三大疾病 (がん・脳血管障害・心不全) に繋がる血管病態の予測やその破綻がもたらす病的シグナルの解明を目指すものである。
NF-kB には IkB が発現して負のフィードバックループが成り立っており、この発現制御によりNF-kB シグナルが減衰振動を起こすシステムについてこれまでに報告されている (Hoffmann, Science 2002)。一方NF-kBと並び免疫制御でよく知られた NFAT (nuclear factor for actvated T cells) 転写因子についてはそのフィードバックシステムを数理にて明らかにした実例は知られていない。我々はこれまでに内皮 VEGF シグナルの包括的解析を通じ、calcineurin-NFAT シグナルが早期に最大に誘導され、それを適切に調節するダウン症関連因子 (DSCR)-1 の役割について生理・病理学的観点から明らかにしてきた。そこで、実際の正常培養内皮細胞に VEGF 刺激を加え、NFAT が核内移行し、DSCR-1 が発現誘導され、今度はカルシニューリン活性が負に制御されて NFAT 核内移行が減弱し、DSCR-1 発現自体が抑制されるこのサーキットでの数理計算を行った。この新学術班での数理への教育活動に参加し、東大伊東、阪大鈴木の指導を受けて解析を進めた。さらにこの計算結果が VEGF 刺激早期の実際の NFAT1、DSCR-1 のタンパクの挙動と一致し、NFAT シグナルの減衰振動のメカニズムを数理にて解明するその一例を公表することに成功した (Muramatsu, et.al. BBRC 2021)。また VEGF シグナルだけでなく、calcium シグナルが顕著に誘導されるshare ストレスの始まりにおいても、この系が成り立つことも明らかにした。一方、NFAT にはファミリータンパクが存在し、NFAT1 とNFAT4 では核内移行の時間的タイミングが異なる。この系については新たな数理のパラメーターを作製中である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件) 備考 (4件)
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