公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
星・惑星形成過程において磁場は様々な重要な役割を果たすと考えられている。そのため星・惑星形成領域の磁場を観測的に制限することは極めて重要である。磁場の情報は磁場に整列したダスト由来の偏波を観測することで制限されることが期待されている。ALMA望遠鏡により、原始惑星系円盤の偏波観測が飛躍的に進展しており、ミクロン・サイズ程度の小さな円盤ダストが磁場に対して整列していることが示唆されている。しかし、理論的には、円盤における小さなダストの磁場整列機構は未解明である。そこで本研究では、円盤におけるダスト整列過程を理論的に明らかにし、ミリ波偏波観測から星・惑星形成領域の磁場の情報を得る方法を探る。
本年度では,昨年度に引き続き,ダスト整列シミュレーションの基礎となる不規則形状ダストに働く輻射トルクの性質を数値的に調べた.特に,ダストの空隙構造を変化させた際の輻射トルクの変化に注目した解析を実施した.その結果,空隙を多く含むダストはトルクをより受けにくく,整列がより困難になることが明らかになった.つまり,原始惑星系円盤のミリ波偏波観測から示唆される整列由来の偏波は,比較的高密度な構造を持ったダストに起因している可能性がある.なお,輻射トルク以外のトルクを考慮した整列シミュレーション・コードは未だ開発途中であり,その完成は今後の課題である.次に,我々は円盤におけるダストの高速回転の観測的検証を試みる研究を実施した.磁場に対してダストが効率よく整列するためには,ダストの高速回転が必要である.このダストの高速回転は,ダスト表面の氷を剥離・破壊することが理論的に期待されている.そこで本研究では,星・惑星形成領域の近赤外線スペクトルからダスト表面の氷の存在量を調査した.まず,我々は近赤外線の偏光スペクトルから氷の性質を推定する新手法の構築に成功した.これは氷ダストによる散乱光の偏光度が氷のスペクトル・フィーチャーの中心波長付近で大幅に増幅する現象を応用したものである.この新手法を利用することで,星・惑星形成領域に存在するダスト中の氷の存在量やダスト半径を推定できる.次に,この新手法を原始星エンベロープの近赤外線偏光スペクトルの観測結果に適用した.その結果,原始星エンベロープのキャビティー領域では,標準的な氷の存在量に比べて大幅に氷が枯渇していることが明らかになった.この氷の枯渇は,高速回転による氷の剥離,もしくは紫外線による氷の破壊の存在を示唆している.本研究成果をまとめた論文を国際査読誌に投稿し,すでに受理・出版済である.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 7件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
The Astrophysical Journal
巻: 910 号: 1 ページ: 26-26
10.3847/1538-4357/abdd3d
巻: 900 号: 1 ページ: 20-20
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10.3847/1538-4357/ab6f07
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10.3847/1538-4357/ab7b68
Publications of the Astronomical Society of Japan
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10.1093/pasj/psz127