研究開始時の研究の概要 |
超新星内部の様子を調べるには, 超新星爆発に伴って大量に放出されるニュートリノを観測することが重要であるが, 実際に観測に成功した例はSN1987Aが唯一である, しかしニュートリノはその特異な性質から, 過去に放出されたものが現在の宇宙も漂っていると予想されている. 本研究ではその「超新星背景ニュートリノ」を大型液体シンチレータ検出器KamLANDで捉えるための背景事象理解を目的に, 素性のよく知られたT2Kビームの人工ニュートリノを利用し, シミュレーションとデータ解析, および光検出器開発の観点からアプローチを試みる.
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研究実績の概要 |
東海村から神岡のSuper-Kamiokandeへ向けて照射されるニュートリノビームを観測する実験, T2Kにおいて, Super-Kamiokandeとほぼ同位置に立地するKamLAND検出器でもおなじニュートリノビーム事象を観測できることを明らかにした. ニュートリノと原子核との相互作用をシミュレートするGENIEやNEUTなどを用いて調べた結果, 100MeV以下の領域においてデータが予想に比べて超過していたが, 高速中性子に関するシミュレーションを行ったところ, 高速中性子による寄与で十分説明できるものであったことがわかった. また高速中性子はKamLAND検出器の外側から内側に入ってくるため, 事象分布を統計的に解析することである程度分離できる可能性を示唆した. 本研究で構築したシミュレータを用いて, KamLANDでの超新星背景ニュートリノ探索における背景事象を再評価したところ, 高速中性子の寄与がこれまでの見積りよりも大きい可能性があり, また大気ニュートリノの寄与はわずかに小さくなる方を好むことがわかった. ただしいずれも不定性が大きい. 液体シンチレータ中で比較的エネルギーの高い中性子が12C(n, 2n)11C反応などで2つの中性子となるパターンがある. これがニュートリノ探索時に1つの中性子を要求する際に, バックグラウンドの見積りが変動する一因となっている可能性が高い. 見積り直したバックグラウンドをもとに解析したKamLANDでの超新星背景ニュートリノ探索を行い, その結果を現在精査中である.
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