公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
充電式電池として高い性能を示すリチウムイオン二次電池や、高い発電効率を有する燃料電池は、広範囲で実用化が進んでおり近年その重要性はますます高まっている。次世代型電池として全固体リチウムイオン電池や固体酸化物形燃料電池が注目されており、高性能化に向けては高イオン伝導材料の出現が望まれている。本研究では、電池材料評価の重要な指標となるイオン拡散係数測定に利用可能な、短寿命放射性核8Liおよび19Oの高偏極・高強度ビームの新しい生成法を開発する。そしてこれらを用いて、ベータ線検出核磁気共鳴 (β-NMR) 法による電池材料中リチウム及び酸素イオンの拡散係数測定を目指す。
2019年度に、放医研の重イオンシンクロトロン加速器HIMAC施設にて、高エネルギー18Oビームの中性子ピックアップ反応により偏極度約10%と高偏極で、かつ高強度な短寿命放射性核19Oビームの生成に成功した。2020年度は、このビームを用いて、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の電解質材料として利用されている高酸素イオン伝導体、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)中における19Oのスピンー格子緩和時間(T1)の温度依存性測定を、ベータ線検出核磁気共鳴(NMR)法を用いて行った。得られた結果は、先行研究の安定同位体17O-NMR法で得られた運動の相関時間の温度依存性を、より低い温度領域まで矛盾なく拡張できることを示した。この結果は、試料外部から注入した19Oイオンが、母体の酸素イオンと同様に振る舞っていることを強く示唆している。このことは、高価な同位体濃縮試料を必要とする17O-NMR法に代わり、19OベータNMR法が新たなSOFC材料の酸素イオン伝導特性評価法として有望であることを示している。さらに、直径が僅か8センチメートルのハルバッハ配列永久磁石を用いた超小型ベータNMR装置を開発し、様々な実験施設に持ち運ぶことが可能となった。HIMACでこの装置の性能試験を行い、19OのベータNMRスペクトル測定に成功した。今後は筑波大学タンデム加速器施設に装置を持ち込み、低エネルギー核反応により生成したスピン偏極不安定核を用いて、電池材料などの研究を新たに展開する計画であり、そのための準備が整った。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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