公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
厳密に統制された実験によって、九州方言、韓国語、琉球諸語を含む諸言語での時間・空間の認知プロセスを明らかにする。従来の言語学的分析に加えて、発話に随伴するジェスチャーとさまざまな装置を用いた実験的手法によって、時空間の認知プロセスの解明を試みる。これによりこれらの言語使用者の脳の中でどのような時間生成、時間処理メカニズムが存在するのかに関するモデルを構築し、そのモデルの脳内での処理に関する知見を得ることが可能になる。この知見は、人工神経回路の構築に必要な時間認識と言語表現の相関を与える一方、人工神経回路のレベルまで掘り下げることが、人間言語に普遍的な時間認知のメカニズムを解明することに繋がる。
研究方法を一部見直し、現地での調査や実験を伴わない方法で、空間認知からの時間生成に関する調査と分析を行なった。1つ目は、既にある動画データを用いて分析するというもので、過年度に収集した韓国語母語話者を対象とした動画と、YouTubeに公開されている日本と韓国のテレビ討論番組の動画と国立国語研究所が構築した日常会話コーパスの動画である。ジェスチャーを観察するために録画したものではないために、不十分な部分もあったが、日本語母語話者が同じ概念を表すために用いるジェスチャーと、どのような類似・相違点があるのかを分析した。収集したデータの量がそれほど多くないため、一般化には限界があるが、現時点では韓国語母語話者が時間概念をジェスチャーで表す際に、日本語母語話者よりも広い空間を使用していると言うことができる。現在は、この現象を引き起こす韓国の社会・文化的な要因の探求に加え、先述した主張の根拠となりうるデータの収集方法に注目している。2023年度に開かれる日本認知言語学会の口頭発表に応募する。2つ目は、読み時間と統語構造の関係について調査したもので、公開されている朗読データを用いて行なった。統語構造の複雑さが読み時間に影響を与えることが明らかになった。3つ目は、時制形式と時間解釈について、論理関係を表す文と時間関係を表す文を対象に行なった理論的研究である。この内容は2023年度に関西言語学会大会シンポジウムで発表することになっている。なお2022年度は、COVID-19の感染対策が多少緩和されたため、海外研究協力者のラファエル・ヌネス氏を日本に招いて研究打ち合わせを行うことができた。ただし、氏の招聘自体は、領域全体のものだったので、この科研費での支出はなかった。そのため、準備していた海外旅費は使用しなかった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (5件)
京都大学言語学研究
巻: 41 ページ: 69-91
10.14989/281542
巻: 40 ページ: 1-23
10.14989/269459
日本語文法
巻: 21-1 ページ: 38-54
論究日本文學
巻: 114 ページ: 41-52
KLS Selected Papers
巻: 1 ページ: 73-84
40022790970