公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
分子が規則的かつ密に充填した結晶は、発動分子の機械的な動きを実動的機能へ繋げるための理想的な分子集積形態の一つと言える。本研究では、分子結晶中における発動分子の機械的な動きを利用した新しい固体物性変換機構を開拓することを目的とする。光応答性発動分子であるフォトクロミック分子と物性発現分子とを融合した分子結晶を合成し、フォトクロミック分子の光異性化反応に伴う原子座標変化および結晶格子変形により固体物性を変換する。分子のナノメートルスケールの機械的動きとマクロスケールの固体物性が強く連動する新しい発動現象を発掘し、発動分子科学の概念と学理を固体物理学へ拡張することを目指す。
本研究では、分子結晶中における発動分子の機械的な動きを利用した新しい固体物性変換現象や力学応答機能を開拓することを目指した。本年度は、光に応答して変形するフォトクロミック分子結晶(フォトメカニカル分子結晶)と高分子材料からなる複合系の力学応答について検討した。フォトメカニカル分子結晶の力学特性の向上および新機能の創出へ向けて、有機分子結晶と高分子材料の複合化を試みた。具体的には、stepwise assembly methodにより分子結晶表面を高分子薄膜でコーティングすることを検討した。フォトクロミック分子結晶で被覆した水晶振動子をポリビニルアルコール(PVA)水溶液へ浸漬し、その後洗浄・乾燥する操作を繰り返した際の水晶振動子の重量変化を水晶振動子マイクロバランス法により計測したところ、結晶表面がPVA薄膜により被覆されることが分かった。同様の方法によりロッド状のフォトクロミック分子結晶をPVA薄膜で被覆し、その結晶の光誘起変形について検討した。PVA被覆を施した結晶に対して光を照射すると、結晶中の分子が異性化して構造変化することで、結晶は可逆的な屈曲変形を示し、またその変形は千回以上繰り返すことが可能であった。また、被覆前の結晶はヘキサンなどの有機溶媒に速やかに溶解するのに対して、PVA被覆を施した結晶はヘキサンに30分間浸漬しても溶解せず、またヘキサン中においても可逆的な光誘起屈曲変形を示した。本研究で検討した有機分子結晶表面の高分子薄膜コーティングは、光応答性発動分子システムになり得るフォトメカニカル分子結晶について、材料特性の向上、ならびに特殊環境下での実働的機能の発現のための表面加工法として利用できると期待される。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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https://www2.rikkyo.ac.jp/web/m-morimoto/index.html