公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
広く植物には、自他の花粉を見分けて自己の花粉のみを排除する自己認識機構「自家不和合性」が知られています。このような仕組みは、花粉側、雌しべ側それぞれで働くタンパク質が特異的に相手を認識することで成り立つと考えられています。本研究は、数理モデルと実験から、自家不和合性の進化を予測・再現することを通して、生物において特異性がうまれる仕組みについての理解を深めることを目標としています。
1点目として、野生集団におけるS対立遺伝子多様性の実態把握を行った。アブラナ科ハクサンハタザオ野生集団の約400個体についてリシークエンスデータ及びジェノタイピングからS対立遺伝子の配列同定を行った。その結果、優性レベルの異なる3種類のS対立遺伝子の中において、同一の特異性をもつとされるS対立遺伝子内にも、オス側因子・メス側因子の推定相互作用部位の中に非同義置換が多くみられることを明らかにした。また、ナス科ペチュニア属の自家不和合性個体約190個体についても、ロングリードシーケンサーを用いたRNA-seqによりオス側因子・メス側因子配列を網羅的に同定する新規手法を確立し、計53種類のS対立遺伝子を同定した。最近分化したと考えられるS対立遺伝子のペアを複数発見し、それらの間でオス側因子群のレパートリーの違いを見出すことで、S対立遺伝子の特異性分化の過程を考察した。2点目として、数理モデルによる新規S対立遺伝子進化条件の検討を行った。新規S対立遺伝子の進化と特異性のゆらぎとの関係について数理モデルを用いて検討を行ったところ、認識特異性がゆらいだ中間状態があることで新規S対立遺伝子が進化しやすくなること、またS対立遺伝子の優劣性と進化のしやすさについても関連がみられることが明らかになった。最後に、自家不和合性関連遺伝子を導入したシロイヌナズナを用いて、花粉管伸長、カルシウムシグナリング、花粉発芽のタイミングなどの観点から自家不和合性の表現型を定量する手法を確立し、そのゆらぎの実態を明らかにした。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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巻: -
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