公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
非ヒト霊長類と、ヒトを大きく分かつ特徴のひとつが、高度な音声言語によるコミュニケーションである。ヒトは音声言語によって互いの意図を共有し、高度なコミュニケーションを成立させることができる。本研究では、非ヒト霊長類の中でも特徴的な音声コミュニケーションをおこなうテナガザルにおいて、その脳で発現している遺伝子を次世代シークエンシングの手法で網羅的に解析する。発声行動と音声コミュニケーションに関係すると考えられる遺伝子の発現プロファイルを解析し、ヒトの音声言語進化につながる遺伝基盤の解明に取り組む。
多様なオミックス解析(ゲノム、エクソーム、トランスクリプトームなど)の手法を駆使して、霊長類の発声行動と音声コミュニケ―ションについて、生態・行動のレベルから、分子神経のレベルまでつなぎたいとう展望を持って、本研究計画に取り組んだ。ほとんどの霊長類が構造化された音節・音声の組合せによる音声コミュニケーションをするが、ヒトでいうところの「歌」と呼べるレベルまで昇華された霊長類は少なく、その代表が熱帯アジアの森林に生息するテナガザル類である。それぞれの種に特異的な歌(ソロやデュエット)が知られており、その遺伝的基盤を探るべく、国内動物園で亡くなったシロテテナガザル複数個体の剖検時に採取された脳から、発声や音声コミュニケーションに関連すると思われる脳領域を分取し、RNAseqの手法で網羅的な遺伝子発現解析をおこなった。採材にはナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)の支援を受けた。複数領域の比較RNA解析から、発声行動と音声コミュニケ―ションに関連すると思われる脳領域において特異的に発現量が増減している遺伝子候補群を検出することができた。また、本邦の固有霊長類であるニホンザルでは、歌と呼べるような複雑な音声はないものの、クーコールと呼ばれる長距離音声で、群れ内の個体間コミュニケーションをしている。餌付け群である地獄谷野猿公苑や、飼育群である函館市熱帯植物園のニホンザルでの行動観察をおこない、こうしたクーコールに関連する行動特徴についての調査に着手した。COVID-19による行動制限の影響を受けて、霊長類の動物園や生息地に出向いての調査が限られたが、機会的な剖検個体における脳からのオミックス解析や、分子神経のデータを行動・生態の分析と組み合わせる研究基盤が整った。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Zoological Research
巻: 43 号: 2 ページ: 147-149
10.24272/j.issn.2095-8137.2022.001
Science
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Current Biology
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10.1016/j.cub.2021.08.002
120007166025
https://noah.ees.hokudai.ac.jp/hayakawa/index.html
https://noah.ees.hokudai.ac.jp/hayakawa/