公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
脳は、神経とグリアグリアが作るMANネットワーク((Microglia, Astrocyte, Neuron)間の交信により機能していることが示唆されているが、その実態の多くは不明のままである。その理由の多くは、神経-グリア双方向コミュニケ-ションの場であるシナプス‐インターフェースグリアをin situで見る技術、グリア機能を操作する技術が不十分であることに起因する。本研究では、in situでこれらを(1)見る技術、(2) 操作する技術、をそれぞれ開発する。これら技術開発を通し、MANネットワーク及びその異常から脳情報動態におけるグリアの役割を明らかにする。
ミクログリア(M)-アストロサイト(A)-神経細胞(N)が構築するネットワーク、MANネットワークの異常が、病態時の脳情報動態に果たす役割の解明を行った。本年は特にミクログリアに注目した。ミクログリアの生存にはcolony stimulating factor1受容体(CSF1R)シグナルが必須で、その拮抗薬PLX5622は任意のタイミング・非可逆的なミクログリア除去・自己再生を可能とする。(1)アレキサンダー病(AxD):AxDはアストロサイト選択的に発現するGFAPに遺伝子変異が入ることで発症する、難治性の神経変性疾患である。ヒトAxD変異GFAP(H239H)を導入したAxDモデルマウスでは、アストロサイトの異常に加え、ミクログリアの異常活性化が認められた。PLX5622によりミクログリアを除去すると、AxD症状が悪化したことから、活性化ミクログリアは主に保護的な役割を有していた。PLX5622のON/OFFによりミクログリアを自己再生させると、強保護性のミクログリアが生み出され、これによりAxDの病態が改善すること、つまり一次性アストロサイト病であるAxDをMANネットワークのミクログリア操作で制御できることを見いだした。(2)アストロサイトのP2Y1受容体シグナル亢進。これまでアストロサイトのATP/P2Y1受容体が興奮性シナプスの双方向性制御に重要であることを示してきた。ミクログリアはATP分解酵素(CD39)を強く発現する。ミクログリアを除去すると細胞外ATP蓄積が起こり、アストロサイトP2Y1受容体-シナプス連関の増強が起きた。病態時ミクログリアは、細胞外ATPを制御することで、アストロサイト及びATP/P2Y1受容体を介してMANネットワークを亢進させること、つまりMAN構成員のすべてが協力しあって病態時脳情報動態を制御されていることが明らかとなった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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