公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
内側中隔のアセチルコリン作動性神経と海馬 との関係に着目して研究を展開する。内側中隔のアセチルコリン作動性神経は、海馬に密に投射 しており、海馬におけるシータ波生成に関わっているとされている。内側中隔のアセチルコリン 作動性神経を特異的に脱落させると、MCH 神経脱落と同様の記憶の向上が認められたことから、視 床下部-内側中隔-海馬間において、何らかの機能連関が存在し、睡眠覚醒状態に応じた脳情報動 態の制御が行われている可能性が示唆された。本研究では、同領域間の神経回路の動作原理、また睡眠覚醒状態に応じた脳情報動態の変化について明らかにする。
視床下部のメラニン凝集ホルモン(MCH)神経は、レム睡眠中に高い活動を示す。MCH神経は、幅広い脳領域に投射しているが、海馬や内側中隔に特に密に投射している。これまでの研究によってMCH神経を脱落させると記憶力が向上すること、逆に活性化すると、レム睡眠が増加して記憶力が低下する作用があることを見いだしている (Izawa et al., Science 2019)。MCH神経は、海馬だけでなく内側中隔にも密に投射し、内側中隔に存在するアセチルコリン作動性神経も、海馬に密に投射しており、海馬においてシータ波生成に関わっているとされている。これまでの研究から、内側中隔のアセチルコリン作動性神経を脱落させると、MCH神経脱落と同様の記憶の向上が認められたことから、視床下部-内側中隔-海馬間において、何らかの機能連関が存在し、睡眠覚醒状態に応じた脳情報動態の制御が行われている可能性が示唆された。そこで、MCH神経が内側中隔のアセチルコリン作動性神経(MS-ChAT神経)にどのように作用しているのかについて、光遺伝学を用いた解析によって明らかにした。MCH神経特異的にチャネルロドプシン2を発現するマウスとアセチルコリン作動性神経特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウスを交配させ、そのマウスにCre依存的に赤色蛍光タンパク質tdTomatoを発現するアデノ随伴ウイルスベクターを内側中隔に局所注入して感染させた。アセチルコリン作動性神経だけがtdTomatoを発現して赤色蛍光を発するため、脳スライス標本を作成し、蛍光顕微鏡下において同定して活動記録誌ながら、MCH神経軸索末端を光遺伝学を用いて活性化させたところ、MCH神経軸索末端の活性化によって、活動電位が発生することを見いだした。このことからMCH神経がMS-ChAT神経に入力して活性化させることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
電気生理学と光遺伝学を用いた解析によって、メラニン凝集ホルモン産生神経が、内側中隔のアセチルコリン作動性神経に直接入力して活性化させることを見いだした。これによって、視床下部、内側中隔がどのように機能連関するのかについて有用な情報が得られた。
視床下部、内側中隔、海馬が機能連関することを明らかにするために、内側中隔のアセチルコリン作動性神経を光遺伝学や化学遺伝学を用いて操作し、海馬機能をどのように変化させるかについて解析する。海馬にシリコンプローブを刺入し、海馬の電気活動を記録しながら、内側中隔のアセチルコリン作動性神経活動を操作することを試みる。また、MCH神経や内側中隔のアセチルコリン作動性神経への入力系路を明らかにするために経シナプス逆行性標識が可能な狂犬病ウイルスベクターを用いた解析を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 7件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 11件) 図書 (1件)
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