研究実績の概要 |
シアノバクテリア・紅藻・灰色藻といった多くの藻類は、光合成の初期反応において太陽光エネルギーを集光性アンテナタンパク質(LHC)によって吸収し、その後水分子を分解して酸素と電子、そしてプロトンを放出する。フィコビリソーム(PBS)は多くの藻類がもつ巨大な光捕集アンテナタンパク質であり、吸収した光エネルギーを光化学系蛋白質(光化学系IとII)に伝達する。本研究では、好熱性シアノバクテリア由来PBSの立体構造とその内部のエネルギー伝達様式を明らかにし、さらにPBSとPSIIの相互作用を解析するため、まずはPBSの中心部位(PBS core)とアンテナ部位に相当するフィコシアニンロッド(PC rod)の構造解析を行った。 クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子構造解析によって、好熱性シアノバクテリア由来のPBS coreとPC rodの構造をそれぞれ3.7 Åと4.2 Å分解能で解析した。PBS coreはアロフィコシアニン蛋白質群(ApcA, ApcB, ApcC, ApcD, ApcE, ApcF)で構成され、ApcEとApcDはリンカー蛋白質と呼ばれる光化学系蛋白質にエネルギー伝達を行う重要なサブユニットである。本研究では、これらのサブユニットの配置とその詳細な相互作用を明らかにすることができた。 そしてPCロッドの単粒子構造解析から、PC内部に結合するリンカータンパク質(CpcD, CpcC, CpcG)の配置を明らかにし、これらリンカータンパク質によってPCロッド内の相互作用が大きく変化していることが明らかとなった。
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