公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
都市部の中心にあるエルサルバドル最大の建造物E3-1(24m高)は聖なるピラミッド神殿である。その前の低くなった部分に、前庭となるように区画する石列がつくられていた。この部分は他の空間とは異なり、聖なる空間であり、日常生活に関連するような施設がつくることはなかった。一方、この空間から外側には地下貯蔵穴などが配置され、日常的な空間とされていたことが分かっている。今までの調査では、最初に自然環境のニッチを改変し最大の建造物を、次に南側に区画した聖なる空間(前庭)をつくり、そして、南に向かった都市化の過程を解明した。本研究では、メソアメリカにおける都市空間の創出の理由と様相を明らかにする。
メソアメリカ南東部太平洋側地方の主要遺跡チャルチュアパの調査を中心として、都市空間創成史の再構成を目標とした。遺跡とその周辺の考古学調査で得られた層位学的な資料と自然地理学的調査成果を基に、都市景観を形成する以前の自然景観を復元する。また、どの自然環境のニッチを先古典期の人々が都市をつくるために選択したのかを解明する。考古学では、先古典期前期から先古典期後期に至る時期の都市景観の復元に焦点を当てる。モニュメンタルな建造物や石彫などが追加され、どのように都市景観が形成されたのかを明らかにする。建造物の建設と都市空間の創成の様相を探るため、エルサルバドル最大の土製建造物E3-1を2022年8-9月と2023年2-3月に発掘した。考古学調査では、都市景観の中心を成す建造物の建築様式とその構造を解明するために、トレンチによる発掘を計画した。発掘成果によると、この土製建造物の外壁部分などは残っていなかったため、建築様式は明らかにできなかった。しかし、内部の建築構造が判明した。また、この地区で最初につくられた建造物に属するか、もしくはそれより以前の床面が検出できた。その床面の下を掘り下げたところ、無遺物層に達した。自然地理学的調査では、ヒトが住み始める前の自然景観の復元を目標としている。また、どの自然環境のニッチを先古典期のメソアメリカの人々が選択したのかを解明する。既存の4万分の1の空中写真を用いた地形判読と、UAVで撮影した空中写真のSfM解析から、サンタ・アナ火山北側中腹の寄生火口からフィッシャー沿いに延びる長大な溶岩ローブの先端が、チャルチュアパ遺跡エルトラピチェ地区付近にあることを確認した。同地区周辺には湧水がみられるが、これは溶岩中の伏流水が溶岩ローブ先端から湧出したものである可能性が指摘され、都市の成立に重要な要素である水と、地形・地質との関係性が示唆される。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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