研究実績の概要 |
本研究の目的は、準結晶を特徴づける対称性と準周期性の観点から、準結晶で発現しうる磁気構造を解析する理論ツールを発展させることで、現在その発見に向けて精力的な研究が行われている準結晶の磁性現象の研究基盤を構築することにある。 今年度は結晶の対称性に適合した磁気構造を求めるための理論として研究代表者が提案したクラスター多極子法を、結晶中で有限の伝搬ベクトルによって特徴づけられるより一般の磁気構造解析理論として拡張し、論文を執筆している(Yanagi et al., arXiv:2201.07361)。また、この理論を準結晶の磁気構造解析理論としてさらに拡張する方法を研究し、その一環として、準結晶に特有の点群対称性のもとで対称化された磁気配列の計算プログラムなどを完成させている。また、これら原子クラスター上の磁気配列からクラスター多極子法を用いて準結晶の適合磁気構造を定義、及び生成する方法を考案し、そのプログラムの開発に取り組んでいる。これらの研究成果は、今後の磁性準結晶の発見とその秩序形態、及び物性を研究する上で重要であり、当新学術領域の領域会議において発表している。 この他、磁性体の輸送現象の研究として、第一原理計算によるワイル磁性体Co3Sn2S2のInドープ効果と異常ホール効果・異常ネルンスト効果の研究、第一原理計算と対称性による磁気構造スクリーニングを用いたCuMnAsの反強磁性秩序相の磁気構造とスピンホール効果の研究を実施し、論文として出版している(Yanagi et al, Phay. Rev. B 103, 205112(2021), Huen et al, Phy. Rev. B 104, 035110(2021))。
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