研究開始時の研究の概要 |
超伝導体中の渦糸は互いに反発する理想的2次元粒子系とみなせる。交流駆動させると衝突を繰り返し徐々に秩序化し, 振幅d が小さい時は、終状態は衝突が全く起こらない可逆フロー, d が臨界値を越えると常に衝突が起こる不可逆フローへと転移する。本研究では臨界点で予想される短距離で液体的, 長距離で固体的となるハイパーユニフォーム構造を初めて実証すると共に, 秩序化は如何に進むかという普遍的問いに答える。
|
研究実績の概要 |
超伝導体中の渦糸は理想的2次元粒子系とみなせる。乱れた初期配置に周期剪断力を加えると, 衝突を繰り返し秩序化する。剪断振幅が小さいときは全粒子が元に戻る可逆フロー, 振幅が臨界値を越えると元に戻らない粒子が存在する不可逆フローへと動的相転移する。本研究では, 剪断振幅の増加と共に, 終状態での格子領域の割合が可逆不可逆転移(RIT)点に向かって単調に増加すること, および長距離の密度ゆらぎがRIT点で抑制される傾向を見出した。この結果は, 無秩序からの秩序生成の指標となるハイパーユニフォーム性がRIT点で最大となるという理論予想と一致する。さらに, 剪断速度を変えたところ, 臨界現象は速度によらず2次元DP普遍クラスに属するのに対し, 可逆相は低速域で広がることがわかった。後者の結果は, 熱的構造変化において広く用いられてきたエネルギー地形モデルが動的構造変化にも適用できることを示す。 一方, 直流駆動力の増加による無秩序-秩序転移の検証も行った。まず, 垂直方向の駆動力を同時に印加できる交差型渦糸系を開発し, 横方向の秩序化を検出する横モードロック共鳴法等を適用した。その結果, 直流駆動力の増加に伴い, 乱れたプラスチックフローから横方向のみが秩序化したスメクチックフローへ2次の動的相転移が起こることを見出した。さらに, 相転移点を横切る駆動電流の増加速度を増すと, 欠陥密度がべき乗で増加することを見出した。急冷による無秩序-秩序相転移(始, 終状態は平衡状態)ではKibble-Zurek(KZ)機構に従って欠陥が生成されることが知られているが, 本結果により, 非平衡相転移においてKZ機構が適用できることが初めて実証された。 本研究で見出された動的秩序化転移や, エネルギー地形モデルとKZ機構の動的相転移への適用可能性は, 準結晶分野を含む広い分野へ波及すると期待される。
|