研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05354
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
反町 典子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 分子炎症制御プロジェクト長 (30217468)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | オートファジー / 炎症 / アミノ酸トランスポーター / 自然免疫 / 代謝 / mTORC1 |
研究開始時の研究の概要 |
免疫細胞のLAMP1陽性小胞に局在するアミノ酸/オリゴペプチドトランスポーターSLC15A4は、mTORC1制御を介してTLR4/7/9やNOD1/2が媒介する炎症応答に根幹的役割を果たし、様々な病態に影響を及ぼす。申請者はSLC15A4によるmTORC1の活性制御のメカニズムを明らかにするため、近位依存性ビオチン標識法によるSLC15A4相互作用分子の網羅的抽出を行い、複数のmTORC1関連分子とオートファジー制御因子を同定した。本研究では、アミノ酸トランスポーターSLC15A4に依存したオートファジー制御機構を理解し、それが炎症応答に果たす役割を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は、アミノ酸トランスポーターSLC15A4に依存したオートファジー維持機構を理解し、オートファジーの維持が炎症応答に果たす役割を明らかにすることを目的としている。SLC15A4は、免疫細胞のLAMP1陽性小胞に局在するプロトン共役型アミノ酸トランスポーターで、炎症応答に根幹的役割を果たし、全身性エリテマトーデスや炎症性腸疾患などの病態形成を担っている。申請者は近位依存性ビオチン標識法を用いてSLC15A4相互作用分子として複数のオートファジー制御因子を同定し、SLC15A4がアミノ酸飢餓下のオートファジー維持に必須の役割を果たすことを見いだし、メカニズムを明らかにした。 SLC15A4をノックダウンしたヒト樹状細胞株(SLC15A4 KD細胞)を用いて、アミノ酸欠乏培地EBSSによって誘導されるオートファジーを解析することにより、SLC15A4がオートファジーの誘導には必須ではないが、EBSS置換後60分以降のオートファジーの維持に必須であること、そのためSLC15A4を欠損すると、EBSS中で細胞は形態異常を伴って細胞死に至ることを見いだした。その際、SLC15A4 KD細胞では時間とともにミトコンドリア膜電位が著しく低下し、EBSSに含まれるグルコースがOXPHOSに利用されないことを明らかにした。さらに。フラックスアナライザー、メタボローム解析、種々の代謝酵素について詳細な生化学解析から、SLC15A4はピルビン酸脱水素酵素の活性化を媒介することで、ピルビン酸をアセチルCoAに変換し、TCA回路へと炭素源を供給するうえで極めて重要な役割を果たしていることを明らかにした。本研究は、SLC15A4がアミノ酸飢餓下で解糖系とTCA回路の連結を媒介し、OXPHOSに依存するATPの供給を担うことによって、自然免疫細胞のオートファジーの維持を支えていることを明らかにしたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然免疫細胞におけるアミノ酸飢餓下のオートファジー維持機構として、アミノ酸トランスポーターに依存した炭素源の代謝フローとATP供給を明らかにし、論文として投稿に至ったことは、概ね順調に研究が進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、自然免疫細胞におけるオートファジーが炎症応答に果たす役割を明らかにしていく。さらに、自然免疫細胞に優先して発現し、線維症などの増悪に関わるアミノ酸トランスポーターSLC15A3が、オートファジー関連分子と会合し、サイトカイン産生を制御することを見いだしていることから、今後① SLC15A3によるオートファジーの制御機構、② SLC15A3が媒介するオートファジーに依存したサイトカイン産生・分泌のメカニズム、③ その生体炎症応答における役割と重要性、について解析を進めていく。オートファジーに依存したタンパク分泌経路に着目し、総括班とも連携し、エンドリソソームシステムとオートファジーの膜構造の情報と炎症応答を連結させた理解を進めるべく解析を行う予定である。
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