公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
気孔は日中の光照射下で開口し、光合成に必要なCO2の取り込みや蒸散を介した根からの水や無機養分の吸収を促進する。一方、気孔は光合成の起きない夜間に閉鎖し、植物体からの水損失を防いでいる。このような気孔開閉の周期構造は、気孔を構成する孔辺細胞がさまざまな外的・内的情報を受容・統合することによって生み出される。本研究では、光シグナルと概日時計による気孔開閉の制御機構を解析し、個別細胞レベルの周期構造の形成メカニズムを解明する。さらに、気孔の開閉周期が蒸散流を介して個体全体の周期情報を統合する可能性を検証し、中枢神経・循環系をもたない植物が個体レベルの周期情報を共有するメカニズムの解明を目指す。
気孔の開閉は光の有無のみならず、概日時計によっても制御されることが知られており、本研究ではこのような光と概日時計のクロストークにより表出する周期構造の形成メカニズムの解明を目的としている。本年度はこのような気孔開閉の周期性を長時間に渡り高い分解能で自動的に測定する系の確立に取り組んだ。気孔が開口すると蒸散による気化熱により葉面温度が低下する。この現象を原理として、赤外線サーモグラフィを用いて気孔開閉の周期性を熱画像を利用して検出することを試みた。外気温は1日のうちで10℃以上の幅をもって日変化するのに対して、気孔開閉に伴う葉温は0.5℃ほどしか変化しない。このような外気温の変化にマスクされ意図した気孔開閉の周期性を捉えることが困難であったが、系の至適化を進め測定環境の温度変化を極力抑えることで、気孔開閉の周期性を捉えることに成功した。外気温は早朝に最低となり正午過ぎに最高となる日変化を示すのに対して、シロイヌナズナの野生株を恒明条件に移した場合、葉温は明期の始めから中間にかけて最低となり、明期の終わりにかけて最高となる変化を示した。これは気孔が明期の始めに開口し明期の終わりにかけて閉鎖することを意味しており、気孔開度測定の結果と一致する。さらに領域内の共同研究を通じて、熱画像から気孔開閉の周期性を精度よく抽出するシステムの開発に着手し、熱画像全体から葉の部分の温度のみを自動抽出・計測することが可能となった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
The Plant Cell
巻: - ページ: 1813-1827
10.1093/plcell/koab067
The Plant Journal
巻: 104 号: 3 ページ: 679-692
10.1111/tpj.14955
巻: 32 号: 7 ページ: 2325-2344
10.1105/tpc.18.00802
http://www.yamaguchi-u.ac.jp/weeklynews/_8427/_9082.html