研究概要 |
無線LANやZigBeeなどの無線通信技術の発展に伴い,既存のバックボーンを介さず臨時に敷設した中継端末や携帯移動端末同士で通信を行うモバイルワイヤレスネットワークの研究が進められている.このようなワイヤレス通信に基づくネットワークでは,移動端末のモビリティがネットワークの性能に大きな影響を与えることが知られている.本研究では,申請者らが開発したモバイルアドホックネットワークシミュレータMobiREALなどの研究成果をもとに,歩行者と自動車などが混在する都市環境における効率的な情報共有方式の確立をめざして研究を実施した. 都市環境においては,場所による密度分布の差異が大きく,信号待ちなどの条件により同じ場所でも密度分布の変動が大きい.このため,ランダム移動に基づくモビリティに比べ,単純な方式の場合,マルチホップ通信の成功率やパケット伝達割合などが低下する.指定領域の人や車の端末の位置を高い精度で推定したり,高確率でデータを保持したりさせるため,各端末の記憶領域にどのようなデータを優先的に保持させるべきかや,中継端末からの再送やルート変更などどのような伝搬アルゴリズム(プロトコル)が有効か,などを理論的に解析すると共に,現実的なモビリティに基づくシミュレーションを通して評価・検討を行った. 無線端末を用いた地図生成手法に関して,昨年度,パーベイシブ(ユビキタス)コンピューティングの分野で最も権威のある国際会議の1つであるPerCom2010で発表した論文が高い評価を受け,Selected Paperとして本年度に学術論文誌Pervasive and Mobile Computingに採録された.また,本手法を災害時における迅速な地図生成手法へと適用した研究成果をまとめた論文が情報処理学会創立50周年記念論文4件の内の1件として採択された.また断続的に移動するモバイルノード群の高精度な位置推定に関する研究成果が,2011年の前述の国際会議PerComに採択され,発表を行う予定である.また,車車間通信を用いた危険車両検出に関する研究成果は,学術論文誌IEEE Transactions on Vehicular Technologyに採択された.
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