研究概要 |
Nd:YAGレーザーの3倍高調波(355nm, 0.3mJ/pulse)を30~40kmの高度を飛翔する気球から真下に発射し、大気中、海洋表層での散乱光、反射光を25cm望遠鏡で受光するシステムを構築し観測を行うことを目的とした研究である.光は4成分に分け、それぞれ355nm(P成分),355nm(S成分),404nm,440nmのバンドパスフィルターを通して光子計数法で測定する。検出光子数の時間変化(散乱光強度の波形)を調べることで大気、海洋中物質の鉛直分布が得られる。30mの鉛直分解能で観測したときに期待される355nm大気レーリー散乱強度は200nsあたり1~10光子であるので数百発のデータを重ね合わせた波形からエアロゾルの高度や光学的厚さを求め、偏光解消度から粒子形状を調べる。また植物プランクトンについてはその中に含まれるクロロフィルaからの440nm付近での蛍光発光量と404nmの水ラマン散乱の信号強度比を用いて測定する。エアロゾルのサイズ情報も得るために532nmの光も検出できるようにした。本年度は上記の光を光子計数法で測定するための光学系を完成させたが気球飛翔機会に恵まれず、屋外での動作試験を行った。日没後、地上から532nmと355nmのレーザー光を上空真上に打ち上げ、製作した分光光学系で散乱光を測定した。1日は目視で快晴、もう一日は部分的な曇りであった。4~6km付近に数百m~1km厚さの複数層の雲が流れる様子が観測された。LIDAR方程式から導かれるスロープ法により減衰係数を求め観測当日の大気状態を数量的に評価した。
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