公募研究
特定領域研究
コバルトドープ二酸化チタンは室温強磁性を示す強磁性半導体である。しかしながら、通常の強磁性半導体のように強磁性の交換相互作用をキャリアが媒介しているかどうか明らかでなかった。前年度に引き続き、電界効果による電界ドーピングおよび酸素欠損量の調整による化学ドーピング、と二つの異なる手法で電子ドーピングを行った結果、双方でキャリア濃度の増加とともに異常ホール効果の増大が見られた。キャリア濃度による顕著な磁気異方性の変化は見られないことから、キャリア濃度の変化で磁化の回転は生じていない。したがって、キャリア増加による異常ホール効果の増大は磁化の増大を示し、電子キャリアが強磁性の交換相互作用を媒介していることが明らかになった。この結果は、室温強磁性を電界効果で制御したはじめての例といえ、室温半導体スピントロニクスへの展開に期待が持てる。また、特定領域内の東大藤森教授グループとの共同研究で、全電子収量および全蛍光収量のX線磁気円二色性分光を行った結果、それぞれ試料表面および試料内部の磁化の定量的測定に成功した。試料内部の磁化の大きさは磁束計による磁化測定とほぼ一致し、バルク磁化といえる。一方、表面磁化はバルク磁化より顕著に小さかった。強磁性が電子キャリアに媒介されていることを考えると、試料表面ではバンドベンディングにより電子キャリアが空乏化しており、表面磁化の減少が起きていると考えられる。これは強磁性半導体に一般に起きうる現象である。
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J.Phys.: Condens.Matter
巻: (In press(掲載確定))
Science
表面科学
巻: 32 ページ: 134-138
10027904828