研究領域 | スピン流の創出と制御 |
研究課題/領域番号 |
21019007
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松下 未知雄 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (80295477)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2010
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研究課題ステータス |
完了 (2010年度)
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配分額 *注記 |
4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
2010年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2009年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | 分子磁性 / 有機ラジカル / 有機導体 / 磁気抵抗 / プリンタブルエレクトロニクス / スピントロニクス / スピン流 |
研究概要 |
磁性金属元素を含まず、伝導電子と局在スピンの両方を有機分子が担う、新しいタイプの磁性-導電性物質を開発し、そのスピン依存伝導のメカニズムを明らかにすることを目的として研究を行った。本年度は、すでに巨大磁気抵抗を示すイオンラジカル塩や中性分子結晶を与えることが見出されているTTF系ドナーラジカルについて、さらなる分子改良を試みた。主に導電性の向上を図るべく、ドナー骨格中の硫黄原子を、より原子半径の大きいセレンに置き換えた分子の合成を進めた結果、いずれも硫黄原子を持つものに比べて高い導電性と低い活性化エネルギーを持つ事が示された。中性結晶で巨大磁気抵抗を発現するBTBNをリード化合物とした分子については、3種の類縁体を合成し、比較した結果、磁気抵抗比はセレンの置換位置に影響を受けることが明らかになった。一方、磁気抵抗の発現温度はいずれも低下した。これらの結果は、ラジカル部への伝導電子の分布を考慮することで、統一的に理解できる。一方、イオンラジカル塩(ESBN)_2ClO_4をリード化合物とし、セレン原子への置換を進めた系については、室温付近で金属的な導電挙動が発現するとともに、やはり低温で巨大磁気抵抗が発現した。さらに、圧力を印加した結果、金属的導電挙動は100K付近まで継続し、磁気抵抗比は-99.5%(電流で200倍)にも達した。以上の結果は、全て有機πラジカルの1/2スピンにより引き起こされたものである。様々な電気伝導モードで巨大磁気抵抗が観察されたことは、ほとんどすべてのタイプの磁性-導電性共存系が有機物質で実現可能であることを示しており、今後の有機スピントロニクスの重要な基礎となる結果といえる。
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