公募研究
特定領域研究
トキソプラスマ原虫は免疫不全患者や胎児・新生児に感染し、重篤なトキソプラズマ症を発症する細胞内寄生性原虫である。今回我々は1型原虫でROP18欠損原虫を逆遺伝学的手法により作製しマウスに感染させ病原性及び免疫学的特徴について検討した。まず、マウスの感染実験により病原性を検討したところ、ROP18欠損原虫はほとんど病原性を失っていた。さらに腹腔感染における野生型及びROP18欠損原虫の時空間的な拡大について検討したところ、野生型原虫に比べてROP18欠損原虫の広がりは有意に狭くまたそのスピードも遅いことが低いことが明らかとなった。次に感染マウスにおける免疫応答について検討したところ、野生型原虫感染に比べてROP18欠損原虫感染マウス由来のT細胞ではIFNγ産生が増加していたことから、ROP18欠損原虫は宿主獲得免疫応答を抑制できないために野生型原虫と違い感染拡大できず従って病原性が低いことが示唆された。次にROP18のどの領域が病原性発揮に重要かどうかを調べる目的でROP18の部分欠損変異体を発現させたROP18欠損原虫を作製した結果、N末端部位の17アミノ酸が重要であることが判明した。酵母ツーハイブリッド法を用いて宿主因子を検索したところ、ROP18結合蛋白質(ROP18BP1)を単離した。ROP18BP1は酵母においてROP18のN末端部位に結合したものの、哺乳動物細胞においては全長のROP18と結合することができなかった。そのメカニズムについてはROP18がリン酸化酵素活性依存的にROP18BP1をリン酸化し、さらにプロテアソーム依存的に分解することを見出した。また、プロテアソーム阻害剤存在下ではROP18とROP18BP1の結合が哺乳動物細胞において認められた。以上のことから、トキソプラズマ原虫の病原性因子ROP18は宿主因子ROP18BP1を標的として病原性を発揮していることが示唆された。
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