研究概要 |
IL-17はT細胞田来炎症性サイトカインであり、近年IL-17産生CD4ヘルパーT細胞サブセット(Th17)が自己免疫疾患に直接関わることが明らかとなり注目を浴びている。一方,正常な個体において存在するIL-17産生細胞は主にγδ T細胞であり、肺、腹腔、腸管粘膜などの末梢組織に多く存在する。我々は膀胱癌に対するBCG療法の抗腫瘍効果において、このIL-17産生γδ T細胞が重要であることを明らかにした。BCGを膀胱内に投与すると1日目から膀胱粘膜に好中球が浸潤してきた。BCGの1週間毎の繰り返し投与によって好中球のさらなる増加が認められた。次に膀胱粘膜でのIL-17の産生をELISAで調べたところ、IL-17の産生がBCG投与1日目から検出されるようになり、5日まで継続された。好中球浸潤におけるIL-17の重要性を確かめるために、IL-17ノックアウト(KO)マウスにBCGを膀胱内に投与して好中球の浸潤を調べると、IL-17KOマウスで有意に好中球の浸潤が低下していた。このことからBCGの膀胱接種により産生されるIL-17が好中球浸潤に重要な役割を担っていることが明らかになった。次にIL-17産生細胞を細胞内サイトカインFACSで解析した。BCGを1週間毎3回投与して22日の膀胱粘膜浸潤細胞をPMA/10Nで刺激して調べたところ、IL-17産生細胞の大部分がγδ型T細胞であった。さらにCδKOマウスにBCGを接種したところ、IL-17の産生と好中球の浸潤が著しく低下した.一方、抗CD4抗体処理マワスや抗NK1.1抗体処理マウスではBCG接種後のIL-17産生と好中球浸潤が減少しなかったことから、BCG接種によるIL-17産生と好中球浸潤はIL-17産生γδ型T細胞が重要であることが明らかとなった。次にMB49膀胱腫瘍を接種して、1,8,15,22日目にBCGを膀胱内に投与すると生存日数が有意に延長した。抗Gr1抗体ではその延長がなくなり、IL-17KOマウスでもBCGによる生存延長が認められなかった。CδKOマウスでもBCGの抗腫瘍効果が認められなかった.以上の結果からBCGの抗膀胱腫瘍効果はIL-17産生γδ型T細胞によって担われることが明らかとなった。
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