公募研究
特定領域研究
高度好塩性好アルカリ性古細菌の細胞膜には、光によって塩素イオンを能動的に菌体外から内側へと能動的に輸送するイオンポンプタンパク質、ハロロドプシン(phR)が存在する。phRの基底状態(pdb:3A7K)に加えて、今年度は、phRに結合している塩素イオンを取り除き、それを種々のイオンに置換して構造解析を行った。中性条件では、結晶をどのような溶液に置換しても塩素イオンを取り除く事は出来なかったが、結晶母液のpHを一度大きくアルカリ性にすることで塩素イオンが外れ、再度中性に戻す事で安定なイオンフリーのphRの結晶を得る事が出来た。この結晶を、種々の陰イオンを含んだ母液に浸すことで、塩素イオンが種々の陰イオンに置換したphRの結晶が得られる。イオンフリーの状態では、phRは長波長にシフトして青色になる。この状態の結晶構造(pdb:3QBG)は、結晶の格子定数が変化するほど大きな構造変化を伴っており、中でもCヘリックスは、最も大きく構造変化を起こしていた。塩素イオンと水素結合していたT126の側鎖は外側に移動し、塩素イオン取り込み経路上にあるE234の側鎖も大きな移動を伴っていた。イオンフリーのphRに、臭素イオン、硝酸イオン、アザイドを加えると、塩素イオンの添加時と同様に紫色に戻る。これらの構造は、イオン結合部位を除いて同じような構造をしていた。ただ、添加によって塩素イオンポンプが外向きのプロトンポンプになる事が報告されているアザイドイオンを結合した構造(pdb:3ABW)は、イオン結合部位での水分子の数が異なっていた。さらに、この状態においてアルカリ性で光照射する事により、シッフ塩基が外れたM中間体と考えられる吸収スペクトルが得られ、その構造解析からアザイドイオンが、E234の方向に移動している事が分かった。
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