研究概要 |
有性生殖によって生み出される子孫は、両親の持つ性質のいずれか一方のみを受け継ぐ場合が多く知られている。メンデルの「優性の法則」として知られる遺伝現象であるが、そのメカニズムは不明な点が多い。最近我々は、植物の受粉に関わる因子の研究を通じて、ゲノム塩基配列の変化を伴うことなく形質変異が生じることで優劣性を決定するという新しい優劣性決定機構を世界に先駆けて明らかにした。本研究では、対立遺伝子間の優劣に関わる新規ゲノムメチル化が、植物の他のアレル間の優劣性現象にも広く関与している可能性を考え、シロイヌナズナ種内雑種を例にして、最新のゲノム解析技術を駆使して上記現象の網羅的探索を行った。 Col-0株、C24株およびF_1雑種の実生からpolyA RNAを抽出し、次世代シークエンサーでその遺伝子発現を網羅的に解析した結果、Col-0株で21,482遺伝子、C24株で21,885遺伝子、F_1雑種で22,079遺伝子(Col-0株を雌ずい側にして交雑して得た個体)および22,247遺伝子(C24株を雌ずい側にして交雑して得た個体)が発現していた。得られたトランスクリプトームデータを基に遺伝子発現領域におけるCol-0株、C24株間のSNPsを検索し、多数のSNPsを明らかにした。このSNPsリストを用いて2つの親系統で共に発現を示すが、F_1雑種になるといずれかの親に由来する対立遺伝子のみが発現を示す遺伝子を探索することにより、F_1雑種において片側対立遺伝子発現を示す遺伝子を多数同定した。
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