研究概要 |
シロイヌナズナのGID1やDELLAタンパク質のGAIのDELLAドメインのタンパク質試料を,既に確立していた実験法を用いて調製した.F-boxタンパク質のSLY1は,全長,F-boxドメイン,それ以外のドメインについてGST融合タンパク質やHisタグ付きタンパク質として,大腸菌での発現を試みたが,良好の発現系は得られなかった.ホモロジー検索や構造予測では,SLY1のF-boxドメインはα-らせんからなる三次構造をもつが,残りの部分(ここが基質と相互作用して,特異的選別に関与すると考えられる)には特定の安定な三次構造はないようであった.このことが原因で,良い発現系が構築できない可能性があると考えた. 平行して,DELLAタンパク質GAI,RGA,RGL1,2,3の全長タンパク質,GRASドメインの大腸菌での発現も試みたが,これらについても良好な発現系は得られなかった.また,これらの共発現系も,今のところ上手く動いていない.全長タンパク質には,遊離状態では特定の三次構造をとらないN-末端のDELLA領域(ドメイン)や,柔軟な構造をもつと推測される配列の続くリンカー領域をもっているので,発現は難しいかも知れないが,GRASドメインは二次構造に富んだ領域であり,三次構造をもつと予測されたが,可用性のタンパク質として発現しない.今のところ,この原因は解明できていない. 以上のように,SLY1やDELLAタンパク質の良好な発現系は未だ得られていないが,GRASドメインタンパク質の一つであるSCARECROWは全長が発現することが,共同研究者Tai Ping Sun(米国Duke大学)からの情報でわかった.そこで,先ず,SCARECROWのGRASドメインを調製して,性質を詳しく調べることとした.このGRASドメインの発現系を構築中である.
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