公募研究
特定領域研究
哺乳類の発生・分化に必須な機構であるゲノムインプリンティング(GI)の確立には、配偶子形成過程におけるアレル特異的メチル化領域(DMR)のメチル化インプリントが主要な役割を果たす。本研究では生殖細胞系列のエピゲノム基盤として、メチル化インプリント領域(DMR)の系統的単離・同定を行い、ヒト生殖補助医療(ART)がゲノムインプリンティング(GI)機構に与える影響について明らかにすることを目的とした。まず、雌核発生胚由来幹細胞(PDS)および雄核発生胚由来幹細胞(ADS)を樹立し、抗メチル化シトシン抗体を用いたCHIP-on-chip法とwhole-genome Tiling arrayを組み合わせ、網羅的検索を行い、既知のDMRを含め、新規Gpr1およびZdbf2領域と300の候補領域を同定(NAR 2010)した。さらに本研究では、ヒト生殖補助医療に用いる精子のDNAを用い、メチル化インプリントについて、異常の頻度、程度、影響を受けやすい遺伝子について解析した。その結果、不妊症精子の約25%にインプリント異常があることが判明し、(Fertile Sterile 2010)、これが生殖補助医療出生児のインプリント異常症の頻度が高い原因となっていると推測した。同様に、流産例78例の17%にインプリント異常を認め、75%は顕微受精や体外授精後の症例で、また精子濃度、運動率、奇形率との相関を認めた。さらにメチル化酵素の解析を行ない、DNMT3L遺伝子多型(Exon5,10)にインプリント異常との相関が見られた。また、ヒトインプリント異常解析法を開発し、東北大学より特許出願した。
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