局在性の強い4f電子が主な物性を担う希土類化合物を近藤格子模型に基づき調べた。動的平均場理論と連続時間量子モンテカルロ法を用いた数値計算により、重い電子の形成に重要な局所相関を正しく取り込んだ計算を行った。それにより、以下の結果を得た。 (1)coherent potential approximation (CPA)と呼ばれる近似を動的平均場理論に適用することにより、Ce化合物の重い電子状態におけるフェルミ面に対するLa置換効果を調べた。その結果、フェルミ面に対する置換効果が、外部磁場の大きさによって、定性的に異なることを明らかにした。通常、フェルミ面の測定は磁場下で行われるが、この結果は、置換実験によって重い電子状態を調べる際の指針となる結果である。 (2)サイトあたり局在スピンが2つあるf2近藤格子模型を調べた。この模型では、局在スピンの局所的な一重項状態はf2電子配置の結晶場一重項状態を表していると考える。数値計算の結果、特定の伝導電子数において、結晶場一重項と近藤一重項が空間的に交互に配置した基底状態が実現することを見出した。この秩序状態の起源は近藤一重項と結晶場一重項を形成することによるエネルギー利得であり、多くの希土類化合物のようなRKKY相互作用が起源ではない点が新しい。この秩序状態がPrFe4P12で観測されている秩序状態を定性的に説明することを明らかにした。
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