配分額 *注記 |
9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2010年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2009年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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研究概要 |
立方晶構造をもつ希土類アンチモン(HoSb, DySb)の研究を行った。HoSbとDySbはT_N=5.4Kと10Kでそれぞれ反強磁性転移を示す。これらの物質はΓ_8四重項が結晶場基底状態の極近傍にあり,多極子自由度が低温物性に重要な役割を果たしていると考えられている。しかしながら低温での詳しい物性についてはまだ明らかになっていない。そこで自己フラックス法を用いた単結晶試料育成を行った。電気抵抗測定からHoSbの残留抵抗比は100程度あり,純良な単結晶試料であることがわかった。この単結晶試料を用いて比熱,磁化,熱膨張測定を行った。TN以下の磁化過程で観測されるメタ磁性転移は以前に報告されていたものよりもかなり鋭かった。この結果もまた我々の試料の純良であることを示唆していると考えられる。DySbについては磁化測定のみ行った。得られた転移温度はTN=9.95Kであり,既報の結果とよく一致することがわかった。 PrCu_4Agも立方晶構造をもち,T_N=2.4Kで反強磁性転移を示す。昨年度この物質の単結晶試料の育成に初めて成功した。今年度はこの試料を用いて比熱,電気抵抗,磁化,熱膨張,弾性定数の測定を行った。弾性定数(C_<11>-C_<12>)/2とC_<44>の温度依存性において,70K以下において明瞭なソフト化が観測された。この弾性定数の結果を結晶場モデルで解析を行ったところ,結晶場基底状態はΓ_5三重項で実験結果をほぼ再現できることがわかった。この物質の興味深い点として,帯磁率および比熱において10K付近でかなりブロードなピークが見つかった。このピークは単純なショットキーピークでは再現できない。この異常については四極子ゆらぎ効果やサイトランダムネスの観点から,今後詳しく調べてみる予定である。 金属化合物SmIn_3は立方晶AuC_3型の結晶構造をもち、14.7, 15.2, 15.9Kで逐次相転移を示す。結晶場基底状態はΓ_8四重項であることが報告されているが,秩序状態についてはまだ詳しいことが分かっていない。そこでSmIn_3の単結晶試料の極低温磁化測定を行った。その結果,0.3Kでの等温磁化過程においてド・ハース・ファン・アルフェン振動が確認された。このことは我々の作成した試料が純良であることを示唆している。
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