研究概要 |
本研究では、系のスピンクロスオーバー転移にともなう絶縁体金属相転移を示すペロブスカイト型Co酸化物群を題材として、主にフェムト秒レーザパルスを用いた過渡反射測定を行うことにより、光照射によってどのような変化が発生するのかを定量的に調べた。研究対象試料としては、特に以下の2例に対し、光励起後の光学応答変化とそのダイナミクスを調べた。 (i)Pr_<0.5>Ca_<0.5>CoO_3において、光照射による絶縁体金属転移と、それにともなう金属ドメインの伝播を発見した。更に、この光金属状態に対して、励起光強度依存性の観点から詳細に過渡反射分光測定を行ったところ、そのドメインの伝播速度は励起光の強度がある敷居値を超えると加速度的に増大していくことを明らかにした。この結果は、Phys.Rev.B 83,161101(R)(2011)において発表された。本研究は、東工大応セラ研の伊藤グループとの共同研究である。 (ii)RBaCo_2O_<6-δ>(R=Sm,Gd,Tbなどの3価の希土類元素)において、フェムト秒レーザパルスを照射後の電子構造変化を調べた。東北大の石原グループによる理論計算との比較により、得られた光誘起状態は、局所的な強磁性ドメイン(高スピンポーラロン状態)という全く新しい電子状態であること、およびその強磁性状態は、系の電子相関の大きさを減少させる(すなわち希土元素をSm→Gd→Tbと変化させる)ことにより光照射によって発生しやすくなることが分かった。この結果は、理論論文とともに現在Phys.Rev.Lett.誌に投稿中である。本研究は、東北大多元研の有馬グループとの共同研究である。
|