公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
iPS細胞誘導因子の1つである転写因子Oct3/4のDNA認識機構を分子の動きの面から解明するべく、本年度は、遊離状態とDNA(utf1)結合状態のOct3/4がどのような運動性を示すのか明らかにすることを目的として研究を進めた。特に、Oct3/4に2つあるDNA結合ドメインのうちホメオドメインの解析を集中的に進めた。まずは遊離状態とDNA結合状態のNMRシグナルの帰属を従来法で完了した。この帰属の情報と、水素結合を直接観測する実験から、ホメオドメインのC末端はDNA結合に伴いヘリックスが長くなることが分かった。続いて緩和分散測定を行なったが、残念ながら、当初、期待していた緩和分散(揺らぎ)は観測されなかった。このことは、蛋白質の揺らぎのタイムスケールが、緩和分散で観測できる揺らぎのタイムスケールとマッチしなかったためと予想した。そこで、違う観点から揺らぎを観測するということで、水とアミドプロトンとの交換速度を決定するCLEANEX-PM測定を行なった。非常に興味深いことに、DNA滴定を行いながら、CLEANEX-PMを測定すると、滴定の途中でホメオドメインが、より柔軟になることが分かった。同じくDNA滴定実験から、化学シフト変化を追跡した結果、単純な2状態交換モデル(遊離←→結合)では理解出来ない化学シフト変化が観測された。これらの結果から、ホメオドメインのDNA結合の過程には、より構造が柔軟な中間状態があることが強く示唆された。
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FEBS J. 276
ページ: 4437-4447
Journal of Biomolecular NMR
巻: (in press)
http://www.sunbor.or.jp