配分額 *注記 |
5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2010年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2009年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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研究概要 |
本年は強相関電子系の非平衡状態の理論の基礎的な問題についての研究を行った。 [1]強相関絶縁体の非線形伝導のメカニズム 電子間斥力によって電気伝導が凍結しているモット絶縁体に強い電場をかけた時の非線形電流はしきい値特性、負の微分抵抗など多くの強相関効果が測定され注目を集めている。このうち、しきい値特性については量子トンネル効果(多体Schwinger-Landau-Zener機構)という立場から説明できることが数値計算および解析的手法により明らかにされている。ところが、従来の理論研究において、非線形電流の時間発展は無限系では詳細には調べられていなかった。我々は非平衡動的平均場理論を強電場中のハバードモデルに適用し、モット絶縁体相におけるIV特性を決定した。その結果、有限温度における電流には二つの寄与があることが分かった。(a)熱活性型の線形応答成分、(b)量子トンネル効果によるしきい値特性を持つ成分。特に後者は多体Schwinger-Landau-Zener機構によって生成したキャリアが実際に電流として測定されることを示している。また、予想に反して、しきい値電場そのものには大きな温度依存性が無いことも判明した。 [2]モット絶縁体の絶縁破壊とBethe仮説法による解析 モット絶縁体の非線形伝導を理解する上で静電場による絶縁破壊の理解が、界面モット転移(TO,N.Nagaosa,PRL(2005))とならんで重要な因子となっている。絶縁破壊における励起のメカニズムは低温では多体量子トンネル効果であり、基底状態から多体励起状態へ電子・正孔対の対生成により進展する。励起が起き始めるしきい値電場がTD-DMRGにより求められた(TO,H.Aoki,PRL(2005))。この計算結果を解析的に理解するために我々はBethe仮説と量子トンネルにおけるDDP理論を組み合わせることにより一次元ハバードモデルの無限系でのトンネル確率を二準位近似の範囲内で求めた。これはババードモデルを非エルミート系に解析接続することによってなされた。結果はTD-DMRGとよく整合するものであった。 [3]非平衡超伝導のFLEX+Keldysh法による解析 我々はバイアス等によって非平衡状態にある強相関電子系の相転移現象を記述する手法としてFLEX+Keldysh法を開発し二つの電極と接合した二次元ハバードモデルに対して適用し、d-波超伝導および反強磁性がバイアスによって制御できることを示した。今後は超伝導体中の準粒子分布を電極でコントロールすることによって超伝導転移温度を上昇させることができるのかを検証したが、バイアスの効果は転移温度を下げる方向に働くことが明らかになった。
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