配分額 *注記 |
5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2010年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2009年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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研究概要 |
有機超伝導体の重要な基幹原料である、4,5-dimethyl-[1,3] diselenole-2-selone (1)および[1,3] diselenole-2-selone (2)の安全な合成ルートの確立に成功した。TSeF誘導体を用いた研究は必須原料であったCSe_2の安全上の問題から近年極めて減少しているが、硫黄-セレンという同族元素置換による効果を比較検討することは、物性面からの系統的な知見を得るために効果的な手法であり、新物質開発の面から大きな意味を持っている。しかし、世界初の有機超伝導体であるTMTSFのハーフユニットであるジメチル体1、および他の誘導体の出発物質となる無置換のセレノケトン体2の二つについては、安全な合成ルートが存在していなかった。CSe_2を用いないジメチル体1の合成は、チタノセンペンタセレニドから容易に誘導が可能なチオケトン体を出発物質として行った。各段階の反応収率は1をグラムスケールで入手するのに十分なものとなっている。後半部分のチオケトン-セレノケトン変換は、前段階で用いるアミンやジセレノール環に含まれる置換基の違いに影響を受け易いが、いくつかの組み合わせを検討した結果、安定して高収率を与えるルートを確立出来た。無置換のセレノケトン体2の合成は、CSe_2-freeの合成ルートを報告済みのチオン体を出発物質として3段階で行うことが出こちらも1と同様に、最終ステップのチオケトン-セレノケトン変換部分について検討を行い、反応条件を最適化している。また、新ルートを用いて分子ユニット1を合成する際の各中間体および1自身のX線構造解析を行った。いずれの解析においても精度良く構造決定をすることが出来ており、今後のTSeF誘導体の分子設計および物性解析のための基本情報として役立つことが期待される。
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