研究領域 | 分子自由度が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
21110516
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
米澤 進吾 京都大学, 理学研究科, 助教 (30523584)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2010
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研究課題ステータス |
完了 (2010年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2010年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2009年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | TMTSF系 / 超伝導ギャップ構造 / 比熱の磁場方向依存性 / 擬一次元超伝導体 / ドップラーシフト / 高感度熱容量測定 / 複素交流比熱測定 / 擬一次元超伝導 / (TMTSF)2ClO4 / 複素交流比熱 / 超伝導揺らぎ / 低速イナミクス / 不可逆過程 |
研究概要 |
有機超伝導体TMTSF系は史上初めて発見された有機物の超伝導体として有名であるが、典型的な擬一次元導電性を持つ擬一次元系のモデル物質としても長く注目されてきた物質でもある。また、電子相関に起因する超伝導が実現する舞台としても早くから注目されていた。我々は高感度の比熱測定を通じてこの系の超伝導状態の詳細を明らかにすることを目指してきた。また、磁化率や比誘電率が交流複素量に拡張されるように、比熱もある状況下では周波数依存する複素量として扱うべき物理量である点にも着目し、この交流複素比熱測定を(TMTSF)_2ClO_4の超伝導状態において測定することも目指した。 本年度の特に重要な成果は、比熱の磁場方向依存性から特定された(TMTSF)_2ClO_4の超伝導ギャップ構造である。磁場中では電子のエネルギーに渦糸周りの超伝導電流によるエネルギーシフト(ドップラーシフト)が生じ、超伝導ギャップにゼロ点がある場合はゼロ点近傍で準粒子励起が生じる。この準粒子励起は比熱を若干増加させる。準粒子励起強度はギャップのゼロ点におけるフェルミ速度と磁場のなす角度に依存して振動するため、比熱の磁場方向依存性にも振動が生じる。この振動を解析することで、超伝導のギャップ構造が明らかになる。 われわれは、高感度の比熱測定により、(TMTSF)_2ClO_4の比熱の磁場方向依存性に僅かな変調が起こることを見出した。この変調と、バンド構造をあわせて解析することにより、この物質のギャップのゼロ点位置を特定することに成功した。これは、擬一次元の超伝導体での比熱測定による超伝導ギャップ構造の解明の初めての成功例である。 この結果は現在Nature Physics誌に投稿済み・査読中である。また、この成果に関して、2011年度以降の国際会議への招待講演の依頼を2件頂いている。
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