配分額 *注記 |
5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2010年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2009年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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研究概要 |
我々は,α-(BEDT-TTF)2I3塩(α-I3)が電荷秩序によって自発電気分極することを見出し,電子を起源とするその新奇な強誘電機構に注目している。この塩を起点とした強誘電物質群開拓を進めるために,本研究では,ヨウ素塩と同様にトリハライドを対イオンとしながらも,結晶構造がことなるα'-(BEDT-TTF)2IBr2塩(α'-IBr2)を選択し,その分極特性の検討を行っている。前年度までに,本研究で作製した液化アルゴン注入用のサファイアアンビルセルを用い,常圧下低温SHG像観測を行うことにより,α'-IBr2塩が巨視的な自発分極を発現する強誘電体であることを示した。比熱測定との対比から,この塩の強誘電性転移は,電気抵抗に異常が観測される温度よりも約40Kほど低温に存在することを明らかにした。エントロピーの見積から,これら2つの相転移は双方共に電荷秩序相転移であることを議論した。このように電荷秩序が逐次的に発生する原因として,電荷自由度の幾何学的フラストレーションの可能性を予想し,その検証の一助としてSHGの圧力依存性測定を行った。測定の結果,2段階の相転移は加圧によって速やかに1つの転移に融合することを示した。これは,静水圧により,幾何学的なフラストレーションが弱められるような構造変化が結晶に発生したためと考えられる。
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