公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
組織形成過程では、モルフォゲンによる領域特異的転写因子の発現により、組織が異なる性質を持つ細胞群へ分割される(領域化)。ショウジョウバエ成虫肢は、遠近軸方向に分節されており、そのうち第5-第3付節の領域化には、ホメオドメイン型転写因子をコードするBarの発現変化が重要であり、Znフィンガー型転写因子をコードするrotund(rn)により制御されている。rnのmRNAはBarの発現が変化する時期に一過的に発現し、Barの発現変化終了後には消失する。GAL4/UAS系を用いてrn本来のプロモーター活性とは無関係にrnを強制発現しても発生後期になると強制発現したrn mRNAは消失したことから、肢の発生後期におけるrn mRNAの消失は、何らかの転写後調節機構によるものであることが示唆された。rn mRNAのさまざまな部分に対応する配列をレポーター遺伝子であるGFPに連結したコンストラクトを持つ形質転換ショウジョウバエを作製し、GAL4/UAS系を用いて強制発現した際のGFP mRNAの発現パターンを解析した。その結果、rn全長をGFPに連結した場合(UAS-GFP-rn)においてもmRNAの発現抑制が起こらなかった。このコンストラクトではrnの翻訳は起こらなくなっていることから、Rnタンパク質自身が関与する可能性が考えられたため、UAS-rnとUAS-GFP-rnを同時に発現させたところ、mRNAの発現抑制が見られた。このことから、rn mRNAの発現抑制にはRnタンパク質自身の機能が重要であり、rnの発現制御には自身のmRNAの発現抑制を介した負のフィードバック機構が重要であることが明らかとなった。このことは、領域特異的転写因子の時間的・空間的発現制御におけるRNAレベルでの制御メカニズムについての新たな知見であり、領域化の新たなメカニズムの提唱に結びつくものである。
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Developmental Biology
巻: (掲載確定)
EMBO Journal
巻: 29 ページ: 1613-1623