研究概要 |
細胞生物学において,細胞内の観察画像からオルガネラと呼ばれる種々の細胞内器官の発光や粒子の出現,消滅等の現象を観察することは重要な課題である.現状ではそれら現象のカウントや位置の特定は目視により手動で確認が行われている.しかし,時系列データは膨大なデータ量となる点と,目視による判断は基準があいまいになる点とが問題となり,その作業は困難を極める.よって,その自動化,定量化が急務となっている.今年度は細胞を撮影した動画像中から,粒子の出現や発光などの局所的な変化が生じた時間の画像のみを自動抽出する方法を検討した. 提案手法の基本的な考え方としては,まずは画像の全域において空間的な変動は極小であるという前提の下に,その差分を抽出することを行う.そして,その差分が大きい時間を発光現象等の観測時点として抽出する.また,(a)不変な場所も局所的な輝度変動に依存する,(b)同じ場所でも時間によって徐々に輝度が変動する,という2つの特性を考慮し,局所的な背景画像を統計的に生成し,それを基準画像とした背景差分を用いることにより,画像的変化が生じた時間である特異時間の特定を行った.また,画像を格子状に細分割し,発光したか否かの判断を各領域で求めることで,発光部位の特定を行った. 実験には,インシュリン顆粒の開口放出現象の全反射顕微鏡による観察データを対象とした.本データは,細胞内の局所における発光現象の観察を目的とし,その回数のカウントや発光位置の抽出が求められている.提案手法においてパラメータを適切に設定した結果,目視による観察と同様の抽出結果が得られた.またこの結果により,抽出領域が2値化されるため,既存の基本的な画像処理法による様々なカウント法,トラッキング法が適用可能となった.
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