研究概要 |
本年度は昨年度の予備検討の段階から一歩進め,北海道大学薬学研究院鈴木利治教授のグループよりご提供いただいた「末梢神経細胞内におけるAPP-GFP輸送に係る蛍光顕微鏡画像」を具体的対象として,以下の2課題に取り組んだ.第一の課題は画像中のAPP-GFPの検出である.同画像は,低コントラストで背景ノイズも多く,また追跡対象を大量に含む上に,それらの見えはいずれも同じである.このため,当課題は,画像内からの対象検出としては最も難しい問題に入る。この課題に対し,(時空間)メディアンフィルタリングによって背景ノイズを極力除去した後,学習理論,具体的には1-class SVMによる検出を試みた.定量的評価実験により,擬陽性を含めた全対象のおよそ40%を検出できることがわかった.しかし同時に40%の過剰検出を伴った.このため,何が問題を難しくしているのかについて入念に解析した.例えば,この課題では,学習パターンの増加が必ずしも性能向上につながらないという特異な傾向が見られた.解析の結果,前述した見えの同一性の深刻な影響がその原因となっていることを見出した.第二の課題として,大局的最適化に基づく物体追跡手法を開発した.これは解析的DPと離散的DPを組み合わせた複合的な最適化アルゴリズムに基づくオフライン型追跡手法である.今回の対象のような厳しい条件において適したものであることを,比較実験により示した.なお,以上の課題遂行と並行して,当課題のような画像情報学と生物学の連携としての「バイオイメージインフォマティクス」の重要性を周知すべく,理化学研究所のグループと共にワークショップを2度開催した.
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