配分額 *注記 |
11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
2010年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2009年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
|
研究概要 |
ミオシンとアクチンは典型的なATP駆動蛋白質であり,生体運動の要であるが,肝心のATPエネルギーが力学エネルギーに変換される仕組みが未だによく分かっていない。特に,ミオシン・アクチンが水中でヌクレオチド依存的にどんな構造状態を示すのか,ヌクレオチド状態と構造状態・エネルギー状態との関係,さらに,蛋白質周囲の水和状態はどう関与しているのか,という点が判然としない。そこで,本研究では計算機シミュレーション(MD計算)によってこれらの難題に取り組んだ。特に,ミオシンの全原子MD計算に注力し,構造状態,エネルギー状態,水和状態のヌクレオチド依存性を調査した。得られたトラジェクトリー(200ns×80本)を解析したところ,アクチン結合領域にヌクレオチド依存的な構造状態(アロステリック応答)が見えてきた。さらに,ミオシン表面の水とイオンの分布にもアロステリック応答が観測された。自由エネルギー計算にも本格的に取り組み,先述のアロステリック応答の検証に加え,レバーアームのパワーストロークは自由エネルギー的に不利な構造変化であり,水-水間の相互作用も関与していることが見えてきた。さらに,粗視化モデルを用いたMD計算によってアクチン-ミオシン間の結合定数の塩濃度依存性・温度依存性を調べたところ,従来の理解(エントロピー駆動)とは異なり,結合にはエンタルピー項(静電相互作用)が寄与していることが示された。アクチンについても大規模計算を実行してヌクレオチド依存的な構造状態を探り,アクトミオシン複合体の全原子MD計算にも着手した。これらの計算機シミュレーションにより,エネルギー変換機構の解明に欠かせないアクチン-ミオシンの結合・解離機構の物理的な理解を前進させることができた。
|