公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
1.アクチンフィラメントの協同的構造変化の方向性の解明アクトS1キメラタンパク質と通常のピレン標識アクチンを共重合させ、ATP添加によりキメラタンパク質内部のS1部分とアクチン部分を解離させたときに、隣接するピレンアクチンの応答を観測することで、アクチン-S1解離に伴う協同的構造変化の検出を試みている。平成21年度は、アクチンフィラメントのP端またはB端にのみ結合すると期待される変異を導入したキメラタンパク質とピレンアクチンを共重合させ、両者の位置関係を規定できたという仮定の下に、構造変化はB端方向に一方向的に伝播すると結論した。しかし今年度電子顕微鏡観察を行ったところ、それぞれの変異キメラタンパク質がフィラメントのいずれかの端だけではなく内部にも取り込まれてしまうことが判明し、上記結論の前提が成立しないことが判明した。そこで全く新しいアプローチとして、B端キャッピングタンパク質、キメラタンパク質、およびピレン標識アクチンをファロイジン存在下で順次重合させることでキメラタンパク質とピレンアクチンの位置関係を規定することに成功し、この実験系において、構造変化がP端方向に一方向的に伝播することを見出した。2.アクチンの疎水的ミオシン結合部位はミオシンの運動に必要か?われわれは以前、アクトS1キメラタンパク質のホモポリマーフィラメントが骨格筋ミオシン断片と相互作用して運動することができることを報告した。この結果は、疎水性ミオシン結合部位に依存しない未知の運動機構の存在を示唆し、その意味するところは極めて重大である。しかし、キメラタンパク質の精製度を高めて再実験したところ運動能は消失し、微量のアクチンを混在させると運動能が回復したことから、以前の実験で運動能が見られたのは、精製度が低く微量のアクチンが混在していたために生じたアーティファクトであろうと結論した。
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Cell
巻: 143 ページ: 275-287