公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では、顔知覚における空間情報の処理の発達について、乳児を対象とした行動実験により検討した。まず、「両眼と口という、要素の配置が顔と同じ図」と「図の上部分に要素が多いが顔には見えない図」の選好を比較した結果、生後2-3ヶ月の乳児は、静止画では選好を示さなかったが、動きを加えると、眼や口が開閉するような「顔」らしい動きでも、その動きを90度回転させた「顔」らしくない動きでも顔選好を示した。この結果から、乳児による顔の知覚および学習を運動情報が促進することが示唆された。この研究成果は英語での口頭発表をはじめとした学会発表を行ない、「包括脳」夏のワークショップでは2010年度若手優秀発表賞を受賞した。さらに、別の研究として、お面を裏側から見たような、鼻部分がへこんだ顔でも「顔」に見えれば、鼻が出っ張った通常の「顔」らしい三次元形状が知覚されるというHollow Face錯視図形を用いた実験を実施し、生後8ヶ月の乳児でさえも成人と同様には錯視を知覚せず、へこんだ顔はへこんで見えることを示唆する結果が得られた。この研究成果は英語論文として投稿中である。また、生後4-8ヶ月の乳児における垂直な刺激と傾いた刺激との選好を比較し、縞刺激という幾何学図形では垂直な刺激を選好するのに対し、頭が上にありその下に手足がある人体のシルエットという刺激図形においては、逆に傾いた刺激を選好することを示した。この結果は、生後4ヶ月の乳児が、傾きを知覚する際に、人体を幾何学図形とは異なる特徴をもつものとして知覚していることを示唆している。これらの研究には、米Minnesota大学のYonas教授・独Bonn大学のKavsek私講師・豪Wollongong大学Hill講師に、学会での打ち合わせや研究室訪問などにより助言を仰いだ。
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Japanese Psychological Research
巻: 52(4) ページ: 281-290
Japanese Psychological Research (掲載決定(印刷中))
Infant Behavior and Development 32
ページ: 468-475
Perception 38(7)
ページ: 1035-1044
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~ymasa/labo/tsuruhara.html