配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2010年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2009年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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研究概要 |
本研究では,近年の人為的な大気中二酸化炭素濃度の上昇に伴って,海洋へ吸収された炭酸イオン濃度の上昇により懸念される「海洋酸性化」の影響を評価することを目的とした。具体的には,太平洋北半球のグアム島沖のサンゴの骨格に記録されている「サンゴ年輪」のホウ素同位体比の分析から過去約200年間の海洋のpHの変動の様子を読み解くことを目指した。 海水中には,B(OH)3とB(OH)4-の2種のホウ素溶存種があり,それぞれの溶存種はpHの変化にあわせて同位体比が変化し,特にpHが7.5~9.5の範囲で変化程度が大きいことが知られている。サンゴ骨格にはB(OH)4-のみが取り込まれることから,その同位体比組成から骨格形成時の周辺海水のpHを推定することができる。 本研究期間では,グアム島沖のサンゴ骨格柱状コア試料を用いて、1940年~1999年までの1年分毎の試料のホウ素同位体比を測定し、過去60年間の同海域の表層海水のpH変動の復元を試みた。本コア試料は1787年~1999年までの記録を保持していると考えられるが,1940年以前の部分については,現在5年毎でのサンプリングを終了し,分析を行っている途中である。 約20mgの試料を酸分解し,この一部を本研究で開発したマイクロ昇華法を用いてホウ素の分離を行った。測定には台湾・成功大学のマルチコレクター型誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)を使用した。分析精度はサンゴ骨格標準試料ICp-1の再現性でみると±0.25‰(2σ,n=20であり、pH値に換算すると約±0.03に相当する。 復元されたpHは0.25の変動幅を持ち、不規則な変動パターンを示す。この変動幅はグレートバリアリーフのサンゴ骨格から報告されているホウ素同位体データと比べると約半分である。グアムのホウ素同位体比(δ11B)の変動は,Pacific Decadal Oscillation(PDO)やWestern Pacific index(WP)との強い相関は認められず,この点もグレートバリアリーフのパターンと異なっている。グアムのδ11Bから,本地域では1940年~1999年にかけて約0.4‰の減少(pHで0.05の減少)が推定される。
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